第25章 過去
「やだ、なんで千冬がそんな傷ついた顔してるのさ」
「……さん」
「優しいね、千冬は」
そういって手を伸ばし、俺の頬に触れた。その手は冷たかった。
「…続き、みよっか」
最後の1ページは、運動会の写真だった。
1位の旗を自慢げな顔でみせるさんの写真。
綱引きで負けて悔しくて泣いてるさんと、笑って抱きしめるお兄さんの写真。
お兄さんの手作りだろうお弁当を二人で食べている写真。
確かにそこには、家族の愛があった。
涙が溢れてきそうなほどに、優しくも暖かい居場所がさんにもあったのだ。
みていたアルバムをしまい、かわりに2冊目のアルバムを手に取る。
開くと、そこには無表情でカメラをみる幼い九条さんの姿があった。
「ふふ…懐かしいな。こいつ、最初はほんっと笑わなくてさ…」
「えっと…」
「あんま話せないけどさ、凛は俺が拾ってきたんだ。
DES・Rowの寮に住まわせながら、俺と兄貴が面倒見てた。
家族みたいだもんだよ、俺たちは」
家族。
この間、それこそさんと喧嘩した時のことを思い出す。
あの時さんに擦り寄る九条さんを思い出して胸がざわついた。
ページが進むにつれ、幼い九条さんの表情が和らいでいるのがみてわかった。
アルバムは、小学6年生の夏休みで終わった。
「これで、おしまい。もうこの先はないよ」
「……それって」
「小6の夏、兄貴は殺された」