第25章 過去
トルソーの隣の棚に目をやる。
そこには分厚いアルバムが何冊も立て掛けられていた。
長い間触れられていないのか、埃を被っている。
勝手に見てはいけないという自制心と、見てみたいという好奇心がぶつかり合う。
しかし自制心はあっさり好奇心に負けしまった。
オレは一冊手に取って開いた。
「これ…」
背の高い人と、二人の子供か写っている。
一目見てすぐ分かった。
この子供はさんと九条さんだ。
この2人の絶句するほど整った容姿は、この当時から既に完成されていたようだ。
どの写真をみても、基本写っているのはこの3人だ。
きっと、この背の高い人がさんのお兄さんなのだろう。
普通だ。特別美形というわけではない。口元は似ているかもしれないが、際立って美しいさんのお兄さんにしては平凡な容姿だと思った。
ただ、写真の中でくしゃっと笑う表情は少し似ている。
「……」
写真をみていると気になる点がいくつか沸いて出てきた。
今でもクールだが、それ以上に写真の中で一切笑わない九条さん。
その九条さんに優しい顔で寄り添うさん。
その2人を微笑ましそうに守るさんのお兄さん。
九条さんとさんがこんな小さなころから仲が良いのはなんら不自然ではないし、むしろ妙に納得する。だけど、友人にしてはあまりにも一緒に写っている写真が多い。まるで家族みたいだ。
それなのに、一切笑わない。
そこまで思考を巡らせ、ハッとする。
これは足を踏み入れてはいけない問題だ。
直感的にそう感じとった。
「なーにーしーてーんーの」
「わっ!!??」
背後から、腕を回されギュッとしがみつかれた。
突然の事で心臓が飛び跳ねる。