第34章 因果※閲覧注意
「…………」
「んお?どうした九条、そんな怖ぇ顔して」
「……いや、なんか。変な感じがした」
「え、もしかして恋?俺に?勘弁してくれ、相手ならもういるだろ!」
「しばくぞ」
こいつ新入りだからよろしくね、と言ったの隣にいたあの男。
あいつを見てから、妙な胸騒ぎがする。
「…あの新入り、何か気にならないか?」
「ん?あー、あいつ?元プロの格闘家だろ、いて損はねぇじゃん」
雪村のこの軽薄さは、たまに色んな意味で見習いたくなる。
はぁ、と横でため息をつけば「なんだよ!」と声が飛んできたので無視をした。
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新入り、もとい椚馬に相談があると言われた。できれば2人きりで、と。
「で、相談って何?」
「はい、自分の家族のことで」
「…家族?」
「ちょっと、複雑な家庭環境でして。
あ、よければ飲み物俺に入れさせてください。格闘家になる前、バリスタ目指してたんですよ」
「えぇ、マジ?」
「あはは、すみません冗談です。
でも、コーヒーはマジで好きで。自分で入れるのが好きなんス」
「じゃ、お願いしようかな」
「はい、総長は甘党ですよね?カプチーノにしましょうか」
「うん、ミルクたっぷりでよろしく」
少しすると、俺の前に良い香りのカプチーノが置かれた。
「どうぞ、お口に合えばいいんですけど」
「ん、いただきます」
椚馬の入れたコーヒーを飲みながら話を聞いた。
最初はなんてことない、仲睦まじい家族の話。
羨ましいなぁ、俺には両親とそんな思い出はないや、と心の中で思いながら、吐き出せない気持ちを紛らわせるかのようにコーヒーを飲み進めた。
「それで、父親が死んで、母が変わりました。壊れたんです。俺らは、本当に仲が良かったのに」
「そう、なんだ。てかさ、このコーヒー、甘くない?」
なんだろう。次第に頭がぼうっとしてきた。
舌がピリピリする。甘いから?
「あれ?甘くしすぎましたかね」
「ん、ああ?うん」
次第に靄がかかったように、視界が歪む。
「そんなに甘かったですか?これ」
ふふ、とほくそ笑むような声とともに、
視界がブラックアウトした。