第33章 追憶

「………うん、やっぱり。綺麗だ」
「ッ、俺を、かわいそうって思ってるんだろ、！だからそんな適当なことッ」
「思うよ。可哀想だと思う。
でも、君の美しさはそれとは別だよ。

本当に綺麗だ、凛くん」
「…ッ、お前に、そんなこと、言われたって……」
「あぁ、俺なんかに急にこんな事されるの嫌だよね。ごめん」
「ちが…そうじゃなくて………」
「ん？」

いまいち言いたい事が汲み取れないので、顔を近づけて覗きみる。

「…ッ、」
「どうしたの？」
「お、お前の…かお」
「うん？」


「ほんとに、同じ人間なの、か…？」

「……………………………」


突拍子もない発言だ。


不意をつくような謎の感想に、二三度瞬きをした後、思わず吹き出して笑ってしまった。

「ふふ、ククク…」
「な、なんで笑うんだ……」
「ご、ごめ、だって！ふふふ…あはは！
あーもう、かわいいなぁ」

そういって、より一層の強く抱きしめる。

「凛くん、ここに君を傷つける人はいない。次そんな奴が現れたら、俺が守る。君を守るために、俺は強くなる。約束するよ。だから」

一息ついて、密着していた体を離す。
その顔は耳まで赤らんでいて、心から愛おしいと思った。

「今日から君は、俺の側から離れちゃダメだよ。死ぬまで隣にいてくれ。約束だよ？」


その微塵の淀みもない、美しい瞳に恋をした。







「―――」

肩を揺さぶられ、目が覚める。

「んあ…朝？」
「俺も今起きた。で、今は10時」
「つまり、遅刻と」
「そういう事」

どうやら二人して寝過ごしたようだ。

「凛、お前の夢をみた」
「俺の？」
「うん、お前を初めて抱きしめた日の夢だった」

そういうと、凛は少し気まずそうな顔をした。

「あの時はそんな背丈変わらなかったのにさ、こんなにおっきくなっちゃって」
「はあの時のままだね」
「おい！流石に少しはでかくなってるだろ！」

こうやって、年相応にじゃれ合う時間が大好きだ。
今までそうして来たように、これからも、いつまでも、凛とこうして二人でいたいと思う。

そっと、凛の頬に手を伸ばす。