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フェアリーテイル 【短編集】

第21章 貴方にだけ


 クエストボードから依頼書を取ってカウンターに向かう途中、足元に何か柔らかいものがぶつかった。

「んぎゅ!」
「あっ!ごめんね、フロッシュ。大丈夫?」
「うん、大丈夫。」

 不注意でぶつかってしまったのは蛙の被り物を被ったフロッシュと呼ばれるエクシードだった。いつもは友達のレクターと一緒だけど、今日はスティングと一緒に仕事に行っていると言っていた。でも…

「あれ?ローグは?」
「ローグはねー、まだお家に居るよ。」
「一緒に来なかったの?」
「うん、もうちょっと寝るんだってー。」
「ローグが?」
「うんー。」

 いつも9時きっかりにギルドに顔を出すローグが、寝坊など聞いたこともない。もしかして…

「ねぇ、フロッシュ。ローグの顔見た?」
「うん、見たよー。何だかね、真っ赤っかだったー。」
「やっぱりそうかぁ~。ローグ風邪じゃない?」
「フローもそうもう。」

 そっか、と言って私は手にしていた依頼書をクエストボードに戻した。そしてしゃがみ込んでフロッシュに問いかける。

「お見舞いに行くから2人のお家教えてくれる?」
「いくー。」


 ローグの家に行く道の途中で看病に必要になるだろうものを色々買い込んだ。そして街の外れにある小さな家に辿り着いた。木造のドアをノックするとややあってドアノブが回され、やや顔の赤いローグが現れた。

「リア?」
「やっほー、ローグ。風邪は大丈夫?」
「どうしてそれを。」
「フロッシュから聞いて、しんどいかなって。」
「そうか。わざわざすまなかったな。」

 そう言って支援物資を受け取って扉を閉めようとするローグ。彼ならそうするだろうと踏んでいた私はがっちりとドアを抑えて言った。

「看病しに来たんだ。入れて?」
「…は?」

 しっかりと固まった彼を確認して身体をドアの隙間から滑り込ませた。少し強引かもしれないが、彼はこうしないと他人を自分のテリトリーに入れてくれない。普段はそれでも良いけれど、風邪の時くらいは誰かに甘えたっていいと思う。私の自己満足かもしれないけれど。

「リア…!移してしまうぞ。」
「大丈夫だって。何か食べた?薬は?」
「いや、ちょっ…。」

 部屋に入って掴んだ彼の手はやはり少し暖かかった。熱がありそうなのでそのままベットに引っ張って行き、有無を言わさず色々質問を投げかけていく。




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