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フェアリーテイル 【短編集】

第11章 氷解


「グレーイ!!氷ー!」
「氷氷うるせぇぞリア、俺は製氷機じゃねぇっての。」
「グレイ様を使うなんて…ジュビア許せない!」

 今日も妖精の尻尾は騒がしい。特にリアはここ数日の暑さにやられて仕事もしねぇで毎日氷を催促してきやがる。

 氷を出してやればしばらくは静かになるからと毎日毎日出してやってるが、いい加減煩わしくなってきた。いちいち敵対心を燃やすジュビアも暑苦しい。

 ―良いこと思いついたぞ。

「リア、ほらよ。」
「ん?…って、冷たぁぁぁぁぁあ‼‼」
「ハハハハハ!」

 背中から服の中に直接氷塊を入れてやる。ざまあみろ、毎日毎日悪びれもせず使いやがって。

「何すんのよ!!しかもあんたでっかいの入れたわね!」
「ハハハ!人を毎日こき使うからだ、ちょっとは懲り、た…!?」

 ―何してんだ、こいつ!

 リアは思いっきりシャツを捲りあげて背中から氷塊を取り出そうとしていた。
 普段日に焼けることのない白い背中が惜しげもなくさらけ出されて、更にリアは背中の上に向かって手を伸ばす。どうやら下着に氷塊の一部が引っかかっているらしい。

 ―おいおい、ホックまで見えてんじゃねぇか!てかこいつの腰ってこんな細せぇのかよ…。背中も真っ白じゃねぇか…

 背中に入っていた氷が解けて背中から腰にかけて滴り落ちる水に目が釘付けになる。

「取れたー!!」

 その声にびくっと身体を震わせ、背中に集中させていた視線を無理やり外す。

「グレイ!」
「…はい!」
「…?あんた何でそんな顔赤いの?」
「!?うっせぇ!!暑ちぃんだよ!」

 ―くそっ!リアの背中が頭から離れねぇ!ジュビアやルーシィのは平気だったのに!ていうか、下から覗き込んでくんなよ!俺は何でこんなやつに動揺させられてんだ?

 これじゃまるで…

「グレイ?」
「…くそリア」
「何なの!?悪戯されてなんであたしが怒られるわけよ!?」
「ほっとけ。」
「はあ?」

 自身が抱いたリアへの気持ちが何なのか分からないほど子供ではない。

 ―ぎゃあぎゃあ喚いているリアを放っておいて俺は内心頭を抱えた。ちょっと肌を見せられたくらいでこんな奴に落ちるなんて、不覚だ。
 
 








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