【ハイキュー】私の苗字は角名になるのか宮になるのか
第12章 クリスマスイブ(前編)
だけどいつまでも待たせるわけにもいかないから
治くんに声を掛けなきゃいけないんだけど。
だけど、いつも以上にシュッとしている治くんに
私なんかが隣に並ぶのは気も引けて。
だけど、ほんと
ふぅ。
ひとつ、空気を吐き出して
周りの視線には知らん顔して。
「ごめん!お待たせ!」
「なんで謝るん?まだ10分前やで?」
「だって治くんが先に来てたし」
「だって待ちたいやん?」
「そう?」
私は待たせるのが申し訳ないから
少しだけ早めに着くようにするんだけど、
待ちたいと思ったことは特にない。
でもそういえば、また数えるだけのデートでは
大抵治くんが先に着いていた。
「だって、デートは準備からやし
だから待ち合わせ時間もデートやし。
それに、この時間が好きやねん」
「へぇ。治くんってロマンチックなんだね」
"意外と" と言いそうになったその言葉は
なんとなく直前で飲み込んだ。
「まぁ、こんなん思ったの最近なんやけど!」
ニッ!と少しはにかむように笑う治くんのその笑顔と言葉は
私に向けられているものだとわかる。
だけどそれを拾っても
私は治くんを喜ばせるような言葉を返せないから。
「へぇ!そうなんだ!」
これ以上会話が続かない、その一言を選んで
同じように笑顔で吐き出す。