第8章 大切で残酷な暖かい過去
ユリス
「やっと休暇だよ…」
エドゥアル
「働き詰めだったからね」
彼等が補佐官になって2年が経った15歳のある日、補佐官として主にユリスへ絶大な信頼を寄せているメディは、久々に2人へ休みを与えた。
少しだけ遠出をした2人は身体に蓄積された疲労を投げ出す様に、海が近いカフェテラスで寛いでいた
メディが休みをくれても、世界は2人に休みを与える気がないようで─…
「や、やめてくれ…!」
突然聞こえてきた少年の声にエドゥアルだけが反応した
エドゥアル
「まさか…子供相手にあの人数が集ってるのか?」
ユリス
「放っておけよ…俺達は今休暇中だぞ」
頬杖をついたままストローを咥えて面倒臭そうに話すユリスに、エドゥアルは大きく溜息を吐き出した
エドゥアル
「休暇だからって無視して良いわけじゃないだろ。僕達の仕事はなんだ?」
ユリス
「守護官」
エドゥアル
「そうだ。守るのが仕事だ」
ユリス
「…別になりたくてなった訳じゃねぇだろ」
エドゥアル
「ほーう?お前はあの子を助ける自信が無いんだな」
エドゥアルは2年前に挑発されたのを仕返す様にユリスを挑発する。
賢いユリスの事だ、挑発だと分かっている筈だ。
だが、こう見えて負けず嫌いな部分もある為直ぐに乗ってくる、そう思ったエドゥアルは目を細めて言葉を投げた
ユリス
「馬鹿言うなよ」
エドゥアル
「じゃ、助けるのか」
ユリス
「当たり前だろ。俺は守護官だからな」
予想通り挑発に乗ったユリスが立ち上がると、それに習ってエドゥアルも立ち上がり集団に囲まれている少年の元へと向かった
「い、たいっ…!」
ユリス
「おい。大の大人が寄って集って弱い者いじめか」
エドゥアル
「しかも、相手は少年じゃないか」
男1
「何だお前等…随分威勢が良いな」
男2
「お前等だって少年じゃねぇか!」
がはは、と汚い笑い声を上げる大人達を2人は汚い物でも見る様な目で見詰めた。