第26章 呪縛と秘密
その視線に慣れないのかリアムは、思わず俯きそうになる。
レティシアもルシアンも表情には出さないが視線から逃れる様にして中へと進む。
レティシア
「はぁ…しんどい」
リアム
「すっげぇ眩しい…」
ホール内を照らすシャンデリアと普段触れ合うことな無い富裕層の空気がリアムには、眩しく見えて溜息を零す。
レティシアがパーティーに参加していたのは幼い頃の話な為、彼女がフォンテーヌ家の長女だと疑う者はいなくて安堵したが、集める視線は多くそれをルシアンとリアムがさり気なく遮る。
裕福女性
「あらあら…愛らしい魔獣さん」
ジルヴァ
「にゃ…?」
裕福女性
「まぁ、本当ね。…貴女様の子ですか?」
レティシア
「え?あ、あぁ……ええ、そうです」
突然掛けられた声にレティシアは、ぎこちなく笑みつつ返答する。それに満足したのか優雅な笑みを残して女性達は去って行った。
ジルヴァを褒められるのは嬉しいが、普段の口調を出す訳にはいかない為…レティシアはこっそり息を吐く
リアム
「何か新鮮だな。レティシアが"ええ"とか」
レティシア
「揶揄ってんのか」
リアム
「ち、違ぇって…!」
ルシアン
「声が大きい」
2人は、うっ…と言葉に詰まらせて黙る。
すると、舞台上に淡いピンクのドレスに身を包んだ女性が立ち…柔らかく優しい声で参加者に挨拶を述べる
リアム
「なぁ…もしかして、あの人ってレティシアの話にでてきた…?」
ルシアン
「嗚呼。レティシアの妹だ」
リアム
「へぇ…やっぱ、レティシアと似てんな」
レティシア
「……嗚呼」
すっかり立派に挨拶をこなす妹の姿を見てレティシアは嬉しそうに目を細める。それは初めて見るレティシアの姉としての表情で…リアムは、ふっと優しく笑む。
挨拶が終わり再びホール内に談笑する声が充満しだすと、不意に誰かから声を掛けられる。レティシアは振り向くと目を丸くする
イリーネ
「もし間違っていたらすみません…貴女、レティシアちゃん?」
昔よりも少しだけ歳は重ねているが、相変わらず柔らかくて優しい笑顔のフェリックスの母であるイリーネと彼女の隣に寄り添うようにして立っている父のエヴァン。昔と変わらない呼び方にレティシアは瞳を揺らす。