第22章 貴方の面影をなぞって
その視線を受け取ったルシアンは立ち上がると訓練部屋の中央へと歩を進める。
レティシア
「自信ある奴は手を挙げろ」
腕と脚を組みながら告げられる言葉に訓練生は顔を見合わせて、こそこそと相談している。
手練であるのが見て分かるルシアン相手に"自信がある奴"等と言われて迷わず手を挙げる事は難しいだろう。
だが、すっと挙がる手があった。前に出るように促されるとその人物は余裕の笑みを見せている
レティシア
「やってやれ、ルシアン!」
リアム
「なぁ…それ訓練生と手合わせする奴に言う事か…?」
レティシア
「あ?何かおかしいか?」
リアム
「おかしいだろ!」
レティシア
「そうか?ユリスも私が手合わせする時こうやって声掛けてくれてたけどな」
何が駄目なのか分からない、と顎に手を当てるレティシアにリアムは、変なとこ受け継いでんな…と溜息を零す。
訓練生
「宜しくお願いしますね、先輩」
ルシアン
「…嗚呼」
ふふっと笑う目の前の男にルシアンの表情は僅かに険しくなる
サーラ
「では……始め!」
サーラの強い声と共に互いに間合いを詰める。
訓練生
「僕は女性に暴力を振るう男になりたくなくてね…貴方が出てきて下さって良かったですよ…!」
拳をルシアンに振りながら未だ余裕を顔に貼り付けて、会話をしようとしてくる。そんな訓練生の態度にルシアンの表情はまた険しくなる
ルシアン
「ふっ…そんなんじゃ、立派な守護官にはなれないな」
訓練生
「何故です?」
意味が分からないと馬鹿にするように口元を歪める訓練生の肩をルシアンは掴むと力の加減をして鳩尾に膝をめり込まる
訓練生
「かは…っ」
苦しさに訓練生の目と口は大きく開き身体から力が抜ける。ゆらゆらしつつもルシアンから距離を取ろうと試みる
ルシアン
「誰かだから出来ない…は、また新しい犠牲を産むからだ」
訓練生
「あっ…!」
ルシアンが距離を取らせる筈もなく、そのまま背負い投げをして訓練生の背中を床に叩き付ける。
小さく息を吐き出したルシアンは痛みに悶える訓練生を見下ろし
ルシアン
「まだ守護官でも無いくせに偉そうな事を抜かしてんな」
訓練生
「く…っ」
悔しそうに歪む表情にルシアンは満足したのか訓練生を起こしてやる