第19章 束の間の休息
それからノアがテーブルを置き、その上にリアムがトレーを乗せると2人はレティシアとルシアンが椅子を並べているのを手伝った。準備が整うとオリヴィアがカップにそれぞれが注文した飲み物を注ぎ、ソフィアが渡す。
ジルヴァは一日中、船を走り回って疲れたのかレティシアの膝の上で丸まって寝てしまった。
オリヴィア
「今日は1日ゆっくり出来たわね」
レティシア
「そうだな。また明日から頑張らないとな」
ルシアン
「嗚呼。…そういえば、護衛に誰を連れて行くか決めたのか?」
レティシア
「あー…決めてない。というより、今その話を出さないでくれ。帰ったら考えるよ」
心底嫌そうにレティシアは眉間を押さえながら溜め息を吐く。
ルシアンはここだから嫌なのでは無く頼んできた相手が気を重くさせているのだと理解しており、今決めなくては彼女は中々決めない上に断りかねないとルシアンは更に言葉を重ねる
ルシアン
「リアムは護衛任務についた事が無い。俺とリアムをつけろ」
オリヴィア
「でも、魔法使える人は二人いた方が有利じゃないかしら?お嬢は使わない事の方が多いし」
ルシアン
「お前も知ってるだろ。護衛が嫌だとか魔法は使いたくないと言いつつも、いざとなればこいつは何だかんだで使う」
ノア
「確かに、それはあるっすね。それにルシアンくんって結構、護衛任務に行ってるしオレよりリアムくんは学べると思いますよ」
繰り広げられる会話を聞きながらレティシアは、目を瞑る。
向いている者が居ないと断ろうとしたのが、やはりルシアンにはバレたか…と思いつつジルヴァを撫でていた手を止め瞼を持ち上げる
レティシア
「分かった、それで行こう」
簡単に決まったそれにリアムは今から緊張する。初めての護衛任務…きっといつもとは勝手が違う。それにフェリックスが世話になっていると言っていたという事は、恐らく富裕層。
尚更、傷を付けられないと妙なプレッシャーを勝手に感じると隣に座っていたレティシアの手が、リアムのミルクティー色の髪の上に乗せられる
レティシア
「大丈夫だ、ルシアンが居る」
"私が居る"では無い彼女のいつも通り過ぎる発言に、いつの間にか肩に入っていた力が、ふっと抜ける