第17章 醜い真実
レティシア
「何がいつだって下の者が自由に動けるように責任を取らなくてはならない、だ。…いつだって責任を取らされるのは下の者だろう」
眉間にシワを刻んでいるレティシアの静かな声が指揮官長室に響く。
シモンは聞かれていた事に動揺し冷や汗を額に滲ませ、視線をさまよわせている。
レティシア
「あんたが企んでる事なんて分かってんだよ。…上に立つとその待遇に固執して自由な発想が無くなるんだ。皆そうだった。私はあんた達みたいにはならない。いつだって、命を懸けて責任を取る。それが誰かを助けるための覚悟だ。……それに、あんたには個人的な恨みもあるからな」
シモン
「何が……何が恨みだ」
今まで黙って聞いていたシモンは拳を握りながら絞り出す様に声を吐き出す。憎しみがこもった声音に4人は様子を窺う
シモン
「バレたのならもう良い。…私はね、レティシアくん。君が嫌いなんだ」
レティシア
「それと人獣を生み出す事と何の関係があるんだ」
ずっと優しく遊んでくれていたシモンの表情や言葉が歪み、向けられる感情に一瞬怯みそうになるがレティシアは負けじと彼を見詰める
シモン
「君が取り締まらなくてはならない魔獣に手こずり、被害ばかり広げ…無能だと司令官が知れば…君が居なくなると思ったからだ!」
レティシア
「は…?」
シモン
「私は今までずっと頑張ってきた。なのに…なのに!司令官に誘われて補佐官になったユリスくんと子供のくせにヒガンバナの指揮官…終いにはルビーの指揮官長だ!親子揃って大して頑張りもせずに!君さえ居なければ、私がルビーの指揮官長に選ばれていたんだ!」
レティシア
「そんな…そんな幼稚な理由で、ユリスを殺せと命じたのか…」
怒りで震える拳を強く握り過ぎて爪が皮膚に刺さり僅か血を滲ませるが、そんな事を気にせずレティシアは開き直って荒れるシモンを見る。
黙っている3人の瞳にも怒りがこもる
シモン
「そうだ!ユリスくんが殺されれば、君は必ず暴れる!だかっ……ぁ」
レティシア
「やはり、あんたが部下に命じたんだな…ユリスを殺せと」
やけを起こしているシモンは告げる予定の無かった事まで吐き出し、途中で思い出して口を噤む。
だが、吐き出してしまったのなら仕方ないとでも言う様に目を見開いて声を上げる