第16章 正体
リアム
「やべ…!」
ノア
「ルーウェル!」
人獣
「グゥ…!」
人獣の鋭い爪がリアムの身体に刺さる寸前、ノアが呪文を唱えた事により人獣の脚は弾かれリアムは難を逃れた
リアム
「ありがとうございます…!」
ノア
「いえいえ」
レティシア
「ジル!」
ノアがリアムを起き上がらせていると、レティシアの悲鳴にも似た叫びが2人の鼓膜を揺らす。
2人が声の方へ顔を向けると、いつの間にか移動した人獣がジルヴァを片手で抱えている。
ジルヴァ
「ウゥ…!」
抱えられているジルヴァは腕から抜け出そうともがくが、びくともしない。
レティシアは苛立つ心を鎮めようとゆっくりと息を吐き出してから人獣を睨む。人獣はどこか嘲笑っている様にレティシアを見ている
レティシア
「そんなんで…勝った気になるなよ」
彼女が放つ殺気に思わずルシアン達は硬直する。
だが、そんな事を気にしていないレティシアは右手を覆っていた手袋を外す。
人獣に抱えられていたジルヴァは元の身体の大きさに戻り、簡単に人獣の腕から抜け出した
人獣
「グル…!」
自分よりも遥かに大きいジルヴァの姿に人獣はたじろぐ。
1度、咆哮したジルヴァは、大きな羽で飛び上がり人獣に攻撃しようとしたが、レティシアはそれを止める
レティシア
「よせ、ジル。…こいつは捕まえ─」
「それは困りますね」
レティシアの言葉を遮って背後から聞こえてきた男の声に、全員が慌てて振り向く。
メガネをかけている男が口元に笑みを浮かべたまま歩み寄ってくる
「捕まる前に…こうするだけです」
ルシアン
「なっ…」
リアム
「レティシア!」
男が懐から取り出したのは銃で…それをレティシアに向けて、何の躊躇いもなく発砲する
だが…
人獣
「グガァァァッ!」
耳を劈くような人獣の声が響き、顔を正面に戻すと痛みに悶えている人獣の姿があり…男はレティシアの後ろに居た人獣を狙ったのだ。
間も無く地面に、ばたりと倒れ人獣は命を手放した。
その一連の流れはとても早く…その衝撃に全員の瞳が揺れている