第16章 正体
アレクシ
「……っ…」
彼女が少女の頃にこうなる事を当然、想像していなかったアレクシは女性となった彼女の艶っぽい表情に思わず息を呑んで見惚れる。
それから、乗せられた脚の内腿へアレクシは手を這わせレティシアの中心へと触れようとする…
が─…
レティシア
「その前に…これを見てくれないか?」
アレクシ
「ん?……っ、そ…それは…」
レティシアが出したスマート端末の液晶を見た途端アレクシは動揺を示す。
それと同時に内腿を這っていた手は引っ込まれた
アレクシ
「な、何で君が…そんなものを」
レティシア
「何でだろうな?…にしても、上手く隠してたなぁ」
アレクシ
「それ…妻には、見せないでくれないか」
余裕たっぷりで色っぽい笑みが浮かんでいたアレクシの表情はどこかに落としたらしく、今では焦りと緊張に眉を下げてレティシアに懇願している
レティシア
「優秀な補佐官様は性欲旺盛で、その端正な顔と逞しい身体で…何人の女性を啼かせてきたんだ?」
焦りからか額に薄ら汗を滲ませるアレクシに問い掛けながら、細く白い指を彼の鎖骨へ這わせる。
さっきまでのアレクシであれば舞い上がっていただろうが、今はそれどころでは無い
レティシア
「良く奥さんにバレなかったな?」
アレクシ
「つ、妻を…悲しませたくなかったんだ」
レティシア
「ほーぅ?何人も取っかえ引っ変えしておいて…それを奥さんが悲しまないとでも?」
アレクシ
「…バレなければ…悲しませないと、思って。…説得力が無いのは分かっている…けど、妻が誰よりも大事なんだ」
レティシア
「はっ、本当に説得力ないな」
数え切れないほどの不倫を繰り返した男の口から吐き出された"妻が誰よりも大事"というそれに、レティシアは冷ややかな笑みをアレクシに向ける。
レティシアはユリスが女遊びが派手だったのを、代わる代わる自分の元へ尋ねてくる守護官ではない、見知らぬ女性達の言葉で知った。
それの全部は"貴女が現れてからユリスが相手をしてくれない"や"貴女のせいで彼が変わった"等と散々言われた。
その度に幼かったレティシアは、私に言われても…と戸惑った