第14章 この言葉を送り返そう
背中に男の子が乗ったのを確認したリアムは、女の子の手を掴んで走り出す
リアム
「くっそ…!」
軽く後ろを振り向きながら避難所を目指そうとするも、それは大型魔獣を避難所へ誘導する事になってしまうと思いリアムは悩む。
どうすれば良いか走りながら考えていると噴水広場に立っていた木を大型魔獣が振った手により倒され、彼等の逃げ場が塞がれた
リアム
「……っ!」
方向転換しようとした所を今度は大型魔獣が塞ぎ逃げ道が狭くなる。
抵抗する術が思い付かないリアムは、背中に乗せた男の子を降ろし、女の子とも手を離すと自分の後ろに匿う
"自分も他人も助けろ"というレティシアの言葉にリアムは、心の中で謝罪する。
低い脚音をたてて近付いてくる大型魔獣が、大きな前脚を振り上げ鋭い爪をリアムに向けて下ろす
レティシア
「悪い。遅くなった」
あの日リアムを助けた時と変わらない声が彼の鼓膜を揺らした。
いつの間にか閉じていた瞼を持ち上げると、目の前の光景にリアムは息が詰まった。
レティシアの右上腕肘下に赤い線が出来ておりそこから溢れた血がレンガに赤い無数の点を描き、そして傷はシュウシュウと音を立てている。
切られるのと同時に右手の甲を覆っていた手袋も破れ落ちてしまい必然とジルヴァが元の姿に戻る
主人を傷付けられ怒っているのかジルヴァは牙を剥き出して獅子魔獣を威嚇する
レティシア
「…っ…フィピテオ…」
痛みに息を僅かに乱しながらレティシアが自身の右手に呪文を唱えると、湯気を立てていた傷から湯気は消えた
リアム
「レティシアっ…その傷!」
レティシア
「大丈夫だ。…ジル!無闇に近付いたら駄目だ、攻撃は避けろ!」
羽で飛び上がり獅子魔獣に攻撃を繰り出すジルヴァにレティシアは叫ぶ。
彼女は何よりも大切にしているジルヴァが傷付くのを嫌う。
とはいえ普段は共に戦っているが、何やら獅子魔獣には特殊な能力があるらしく、それを避けようとしているのだとリアムは理解する