第10章 他を守る者へ
元の姿に戻ったジルヴァは尻尾を器用に動かしてリアムと男の子を背中に乗せると、レティシアを見る
レティシア
「ジル、2人を頼む。ヒガンバナに着いたら、戻ってくるんだぞ」
それに返事をする様に小さく鳴くと羽を揺らして飛び上がり、ヒガンバナ基地がある方へ去っていった。
レティシアはゴリラ魔獣へ視線をやる
レティシア
「さっさと…終わらせるぞ」
ルシアン
「嗚呼」
2人は同時に走り出す。
ゴリラ魔獣が大きな手を振り下ろすも、2人は素早く避けその手を同時に蹴り上げる
牙を剥き出しにして叫んだ後に、ゴリラ魔獣は両手を振り回して2人を捕まえようとするが…素早く細かく動く2人を捕らえる事は出来ない。
ルシアン
「……っく……らっ!…レティシア!」
レティシア
「嗚呼…!」
ルシアンが持っていたロープをゴリラ魔獣の片脚に巻き付け思い切り引っ張ると、不意に訪れた衝撃にゴリラ魔獣はそのまま仰向けに倒れる。
レティシアがルシアンの叫びに返事をしてから、顎先に乗り
レティシア
「さっさと大人しくなれ」
彼女がゴリラ魔獣の額に注射を打つと、剥き出していた牙は咥内にしまわれ穏やかな表情になった。
レティシアが額から降りたら、まるで暴れていたのが嘘かのように森へと去っていく
レティシア
「はぁ…っ、は……今回は被害が多くなっちまったな」
ルシアン
「嗚呼…、…手強かった」
ゴリラ魔獣を見送った2人は潰された家を見て、息を切らしながら呟く。
レティシアが戻ってきたジルヴァを見付け手袋をつける。
小型魔獣になったジルヴァがレティシアの脚元に降りると、優しく頭を撫でてから避難所に向かう