第3章 身をもって
レティシアの露出した格好やヒールに、動くなら危ないのではと問うていたが、返ってきたのはノアからで
ノア
「そんな心配、必要ねーよ。うちの姫さんは強ぇから」
そうなのか、と言葉を返そうとした瞬間に聞こえてきた咆哮にリアムはそちらへ顔を向ける
リアム
「でっか…」
そこにはリアムが見てきた生き物と比べられない程、大きな狼のような魔獣が唸りながら3人を見ていた。
距離はあるもののその迫力に思わずリアムは、1歩後退ったが2人は慣れているのか笑みすら浮かんでいる
リアム
「どーやって落ち着かせんだよ。…まさか殺すのか?」
震えそうになる声を何とか堪えてリアムはレティシアに問う。
すると彼女は肩に乗っていた魔獣に何かを告げ、それを理解したかのように小さな羽を揺らしてノアの肩へ移動する
レティシア
「見てな。これが私等の仕事だ」
リアム
「お、おい…」
ニヤリと笑ったかと思えば、レティシアは何の恐れもなく大型魔獣の前に立つのでリアムは驚いてしまうが、ノアに肩を捕まれ大人しくレティシアへ視線を向ける。
すると大型魔獣はレティシアを見て一気に距離を詰めるように走り出した。
四肢で力強く地面を蹴り、牙を剥き出しにしてレティシア目掛けて突き進む。
流石にまずいのでは、とリアムが再び口を開こうとした瞬間…
レティシアは地面を蹴って飛び上がり宙返りをし、大型魔獣の頭に軽く片手をついてから背中に乗ると腰ベルトに付いていた注射を手にとり、キャップを口で取り思い切り大型魔獣の首元に針を刺す
すると、大型魔獣は急に穏やかな表情になり動きを止める
リアム
「……ぇ」
それに驚いていると大型魔獣から軽い身のこなしで降りてきたレティシアは、腰に片手をつき
レティシア
「こんな感じだな」
リアム
「いや、無理だろ…」
さも当然のように告げられるそれにリアムはげんなりしながら答えると、レティシアは満足そうに笑み
レティシア
「簡単じゃなかったろ」
リアム
「え…?」
レティシア
「あるだろ、やり甲斐」
それはほんの数時間前に吐き出したリアムの言葉に対して訂正を求める様に聞こえ
リアム
「……嗚呼」
想像と違ったそれにそう答えるしかなかった