第8章 大切で残酷な暖かい過去
ユリス
「レティシアが…俺の、娘で良かった…、最期くらいは…ちゃんと言って、おくか」
レティシア
「最期って…」
ユリス
「…愛、してる…レティシア」
レティシア
「……っ…、私も…私も、愛してるよ…ユリス…」
娘からの愛を受け取ったユリスは静かに目を閉じた…。
優秀で人生はつまらないと思って諦めていたユリスが出会った暴力を振るわれ同じ様に人生を諦めていたレティシアと共に過し、父親としてレティシアを立派に育て…娘から愛される"ユリス·ロベール"は33歳という若さで、この世を去った。
動かなくなったユリスを抱き締めたままレティシアは慟哭する。
だが、ふと…ユリスの首にかかっているペンダントが目に入る。
レティシア
「これ…」
それは、いつからかユリスがかけるようになっていたもので…彼に問い掛けた日の事をレティシアは思い出した
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レティシア
「このペンダント開くの?」
ユリスがかけていたロケットペンダントを指さしながら幼い少女が問うと、彼はそれを摘んで見せた
ユリス
「嗚呼。ロケットペンダントっていうんだ」
レティシア
「ロケットペンダント…?」
ユリス
「中に大事な写真を入れて自分の力にするんだ。お守りだな」
その言葉にレティシアは興味津々で、座っているユリスの膝に乗り見上げる
レティシア
「へぇ…ユリスはどんな写真を入れてるの?」
ユリス
「内緒」
レティシア
「えー…知りたい。ユリスの大事」
唇を尖らせて拗ねる少女の頭を撫でてやりつつも、ユリスは意地の悪い笑みを浮かべ
ユリス
「駄目だ。…それにお子様には刺激が強いからな」
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レティシアは震える手でそのロケットペンダントを開く
レティシア
「馬鹿…何が、刺激が強いだよ……っ、ユリスの馬鹿。これがあんたにとっての大事だったのかよ…っ」
そこには5歳のレティシアがユリスに肩を抱かれて笑っていて、その隣には背中に手を置かれたジルヴァもいる…あの日、家の前で撮った家族写真だった
それを、ずっとお守りとして身につけていた事を知ったレティシアは、更に苦しくなる