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僕と彼女の共同戦線

第9章 容疑者


******

「それは…本当かい、氷月」
「…ええ」

そこには両手を縄で後ろ手で縛られた葵と、氷月の姿があった。
クロムが脱獄した。そして、監視役に積極的に差し入れをしていた葵が怪しい、と。

「葵クンの報告に従って、現場の検分の為に立ち会いましたが…。これを」
スッ…と差し出したのは、葵の差し入れした竹筒の水筒だ。中には水が僅かにだが入っている。

「匂いを嗅いでみて下さい」氷月の差し出した竹筒の水筒を手に取り、匂いを嗅いだ司は驚愕する。そして、恐る恐る中身に指を1本差し込みーー
ひと舐めした。舌に広がる刺激。これはーー

「…うん。これは塩水だね」
「ええ。後で君も現場の検分をお願いします」
「そうするよ」他には?と司が報告を促す。

「現場を見た限り、クロムクンはどうやら竹の牢を繋いでいた縄を溶かした様です。手法は分かりかねますが」
「科学使いの名は伊達では無かった、と言う事だね」フ、と司が笑うと、静かに手を縛られたまま蹲る葵の元へと行き、しゃがむ。

項垂れたままの彼女には、黒い布で目隠しがされていた。手元を縛るロープの先には、氷月の手がある。

「葵。君が差し入れに来ていたのは、明白な事実だ。ーーうん。君は今まで俺に協力してくれた大事な部下だ。出来れば穏便に済ませたい。


ーー何か、言う事はあるかい」

要するに弁明せよ、といった所か。確かに今ではただの塩水を差し入れた程度。疑わしい程度である。
ならばーー



私の取る選択肢は、これしかない。

真っ黒な視界を見据えてニッ、と笑ってみせた。





「……監視の陽君を滝から落としておきました」
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