第9章 容疑者
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その後。葵は誰にも伝えていない、ひとつのミッションに取り掛かる。
木は森に隠せ、とはよく言ったもので、陽の遺品である仮面の様なそれを、まだ石片を回収していない、バラバラにさらた老人達の石像の前に持っていく。
陽の仮面を地面に置くと、フンッ!!と思いっきり力を込めてバッキバキにする。更に粉々になったそれらを石片達に紛れ込ませてーー偽装完成。
滝で落ちました。で、こんな顔に貼りついてる様な物が遺品として残らないし簡単には外れない。おそらく責任を自分が負う為に陽がついた嘘だろうが…
軍師としては『下策』だ。
何より、こんなのがあれば司の事だから、埋葬しようとか考えるに違いない。そうなれば墓に行って、ケータイの存在がバレる。それは避けたい。
ーーそして、氷月の元へと行く。
「また君ですか、葵クン」
「そうですよ~」仮面を被った笑みでニコニコする。
「ちょっと耳貸して~」「仕方ないですね」
氷月が中腰になると、耳元でごにょごにょ、と呟く。
「それも策の一つですか」本当にちゃんとしてますね、と呆れながら元の姿勢に戻る氷月。
「当たり前だよ~」当然と微笑むと、はあ、と大きなため息をつかれた。
「…仕方がありませんね。行きましょうか」
そうして氷月に連れられ、葵は先ずーー
かつてのクロムの牢獄へと向かった。