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僕と彼女の共同戦線

第6章 手のかかる猫


「『羽京君は、なかなか慎重だよ。自分の目で見て、聞いてから判断するタイプ。だから、変に私が『落とす』のは得策じゃないかな』ねえ…。」
目の前の人間は、静かにそうゆっくりと復唱した。

「……要注意人物の僕を難攻不落な超要注意人物に仕立てた上に、落とすのは得策じゃない、か…。
あはは、どう【落とす】つもりだったのかな…?」

真上にはニコニコと笑っているようで、ちっとも笑ってない羽京。

「この度は…こちらの不手際で……ご不快な想いをさせてしまい…大変申し訳ありませんでした…あと私の台詞の真似するの止めてください~……!」
対して羽京に半泣きで叫ぶ葵。

その格好はーー

折角のメリハリのついた豊満な身体つきを覆い隠す様に布団で全身ぐるぐる巻きにされた上、更にはロープで縛られている。もはやイモムシ状態だ。

【簀巻きの刑】である。……もちろんこれは彼女が勝手に言ってるだけだが。

ちなみに簀巻き自体は、実際に刑罰としてあるらしい。なんでも葵曰く、江戸時代の私刑であり、身体を簀巻き状態にして水中に投げ込む物だ。

葵は良くも悪くも『偽悪者』で、裏で自然とみんなの為に善行を積んではいるが、表向きにはそれを出せない。バレた暁には、悪人面をする。

思った事や好意でも素直に口にできないタチの悪い性格で、いつも好きな相手ーーこの場合羽京を困らせてきた。

羽京は今年の1月からかれこれふた月以上の付き合いであり、他の人間よりは彼女を理解している自信はある。が、その理解度を超える問題行動を起こすのでーー

こうして【簀巻きの刑】に処すのである。イタズラしまくる困った猫なので、こうしてお説教しないと駄目なのだ。……本当に手がかかる。

今日も彼女がご飯とその後のライブ活動を終えてから寝室に入ったのを見計らって、彼女の部屋の布団でぐるぐる巻き。「またすまきー!!」と叫ぶ彼女を無視して、そのまま出来上がった簀巻きを自身の部屋に持ってきてベッドに転がして、説教を始めてーー今に至る。
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