第4章 仮面の下
「……それで?クロム君の一連の発言内容、『本当は』どう取ってるの?」
「司君には報告しましたが~」
「僕にはしてないよね」ニッコリと答える羽京に、はぁーい、と言いつつ葵は報告を始める。
ーーこっちは先程と違い、本気の報告だが。
「一番気になるのは、『歌手』関連の話題への反応ですね。昨日初めて会った時に『お前も』歌うのか、って言ってたのでまず同種の存在は科学王国に居るみたいですね」
「うん。僕もそう思うよ…その先は?」
急かさないでよ~とプンスコしつつも、葵が続ける。
「それだけでは特段気にする必要はありませんが…私が『四天王』って呼ばれてる理由を『歌でみんなを癒してる』って言った時、悩む様な、苦悶の表情をしてました。普通はあそこでそんな表情する理由が見当たらないので。せいぜい、そうなんだ程度です。
……顔や感情の変化を見る限り、あれは恐らく……」
「なるほどね。僕達、司帝国を『歌を使って』瓦解させる策を向こうが立ててる。だからそこで困った」
「十中八九、そうかと。でも私は公認だからともかく、歌なんて目立つのはまあまず早々流せません。
ましてや、ここに居るのは現代人です。科学王国民の人は殆どのメンツが原始の人々で構成されてる筈です。
彼等が歌っても現代人を動かす程の影響力は恐らくありません。歌うなら現代人一択ですね。
何より先ず、復活液が科学王国には無いはずです。都合よく、現代人がみんな知ってるクラスの人間が復活する私みたいな可能性も低いーー」
「ーーとなると、
①歌を使って瓦解させる
②恐らくは科学王国内の現代人は千空とゲン以外居ない。復活させられてない
③必然的に、みんな知ってる様なクラスーー最低でも君クラスの歌手だね
そして④がーー
ーー恐らく、その歌手は死んでいて、歌だけが遺っている。……千空たち、科学の力で」
「…………。」
そこで葵は沈黙した。ひとつの有り得なくは無いが、そうすれば辻褄の合う、とんでもない可能性。
「……まだ『彼女』を千空達が選んでいる、とは決まってないよ」
葵の心中を推し量った羽京の一言が、染みる。