第3章 謎の女性
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「……おかえり、葵」
「ただいまです~、司君。」
私は司君の居る洞窟、通称『玉座の間』に来ていた。
「うん……クロムの調子はどうだい?」
「特に異変はありません。監視体制にも問題無し、各員罠以外の所に配置しております。
車両特攻用の罠についても監視員が口を滑らせてない様でしたし、順調かと。ただ…」
「ただ?」司君が尋ねる。
「監視役の陽君に、『四天王』と軽々しくクロム君の前で言われたのが気にかかります。彼は確かに武力の才はありますが…。あまりこちらの情報を渡すのは良くないかと。
…私が『密偵』と察して頂けたら、もう少しクロム君の警戒心が解けたのに。」
残念です、とため息をつく。
「…密偵とバレても大元の作戦に支障はありません。ですが…本当に万が一ですが、『脱獄』でもされた時に車両特攻の罠の事などバレては困ります。改めて、箝口令を敷く様に申し上げます」
「…うん。そうだね、その辺りは俺達の方でやっておくよ」クロムの方は?という眼差しで私を見る司君。
「クロム君ですが……お菓子で釣ったら好感触でした。科学使い、と名乗るだけあって見た事の無いものには食いつきがいいですね」
「さっき言っていた君への警戒心は?」
「少なくとも、司君、氷月君、羽京君…上位層はもちろん、監視員よりも警戒心は弱いですね。
……敢えて『司君に復活させられてない』『武力兵では無い』と言ったのが効いたのでしょう。」
「四天王の件はどう処理したんだい?」
「石化前の知名度と、歌で気が付けば祀りあげられてる、『武力は』持っていない四天王、という位置付けです。……ただ、『噂話』は流れてくる……とだけ話しておきました。