第16章 おやすみの前に
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「兄さん……!!」
コールドスリープ直前。命の火が燃え尽きる直前に、ゲンが未来を連れて来た。
「未来……?」
「兄さん聞いて!!これ、貰ってん!羽京くんと葵ちゃんから!」
そう言って未来が差し出したのはーー
いつか、葵から貰った青い薔薇と同じものだった。
結婚を祝福する自分に、彼女が差し出した花。
『ーーこれ。持ってると、ご利益ありますよ。』
大事な人に、出会えましたから。そう言いつつ、彼女はウェディングドレスの髪飾りを差し出した。
ーー確かに、ご利益があった。
目の前の大事な人ーー未来を見詰める。
「……未来、俺も、同じのを持ってるけど…
ご利益があったよ」「…?ご利益?」
「持ってると、いい事がある、って事かな」そう言って笑った。
……羽京も、彼女からきっと同じ花を貰ったのだろう。そして、未来へ渡したーー
ーー未来へと繋がれる、バトン。
「…大事に、持っておくんだよ」「…!!うん!!いしし、兄さんがそう言うんなら、めっちゃ効果ありそうやね」
そう言って青い薔薇を握り締める未来を見ていた。
ーー大事な人に、出逢える花。
未来。いつになるか分からないけど、いつかーー
また、会いに行くからね。
ーーそして、獅子王司はしばしの眠りについた。