第19章 許すとか許さないとか
「ケーキ超美味しい!砂藤さっすが〜!」
「お茶子ちゃん、そんなに食べると夕飯が入らないわ」
「俺の前に座んじゃねェクソデク!」
「純白が漆黒の闇に染まる時、」
お前ら本当にうるせぇな・・、そう思いつつ
こいつらを眺めるのは嫌いじゃない
入学以来、この短期間で幾つものピンチを覆してきた教え子たちだ
そう素直に誇れる自分も案外悪くないとさえ思い始めている
「相澤くん、すごく優しい顔してる」
気付くと愛しい人が隣に寄り添い、幸せそうに俺を見つめていた
「さすがにお前のその姿には浮かれるな、参ったよ」
本当に綺麗だ、生徒たちに聞こえないようにそっと囁いて彼女の手を握った
「締めの挨拶はもちろんこの方ァ!
根津校長Ohhh!」
「宴もたけなわなのさ!」
てっきり簡単な祝辞で終わると思っていた校長の話は、その後思わぬ展開を見せる
「相澤くんは我が校のために本当によく働いてく
れている、そろそろ彼にも人生を共にする伴侶
が居てもいいと思ってね、」
保健医の候補者リストに薬師くんを見つけた時、相澤くんにぴったりな女性だと思ったのさ!
「さっすが校長ォ!
こうなることを予想してたってかァ!」
優雅な所作で紅茶を一口飲むと、校長は穏やかな口調で続けた
「手始めに、二人の部屋を向かいにすると効果は
抜群、お勧めのカフェを薬師くんに教えたり、
近くにペア食器を扱う雑貨店を誘致したりね」
そのどれか一つでも、二人の愛が始まるきっかけになっていたら私は嬉しいのさ!
HAHAHAHA!と紅茶をこぼしながら笑うその姿は期末試験さながらで
「オレにもそのパターンで斡旋頼みますよォ!」
「何言ってるのよマイク!私が先に決まってるでしょ!」
そんな二人の言い争いを他所に
揃って赤面絶句する新郎新婦に、会場にいる全員が確信を得る
((( 個性、ハイスペック!!!!!)))
「ど、どれか一つでも、って」
「何も言うな、こいつらに悟られるぞ」
これ以上恥をかいてたまるか、集まる好奇の視線を片っ端から威圧していく
「その様子だと、私の計算は正しかったようだね」
もう殆ど残っていない紅茶を満足気に飲み干し、にこにこと体育館を出て行く小さなその姿を全員で見送った