第16章 思い出すなら最後まで
足で膝を割り、太腿から腰まで弄るようにじっくりと撫で上げれば目に涙を溜めてさらに甘い声をあげるその唇
「欲しく、なってきただろ」
体重をかけ彼女を壁に押し付けると、すでに足の力が抜けていて
俺が支えるのは簡単だが彼女の方から縋り付いてほしくて、その腕を俺の首に回させた
「離すなよ」
そう言うと潤んだ目が俺を睨む
服に手を入れると剥がそうとする弱い力が押し返した
「相澤くん、だめだって・・っ!」
かなりマジになっちまったな、なんて多少後悔しながらも手が止められない
スカートの裾に忍ばせた途端、パシッと叩かれたその手は少しも痛くなくて自然と笑みが浮かんだ
「もう!相澤くん!!」
目に涙を溜め睨むその必死な表情も、息が上がって上下する肩も
ほんと、最高に唆るよ
「思い出せてよかったな」、湯気が出そうな顔で怒りを露わにする彼女に意地の悪い笑いが止まらなくなって
「全っ然、違う!!昔の相澤くんはこんなんじゃありませんでした!!」
真っ赤な顔をして怒る姿が愛しくて口付けようと近づくと、思いっきり突っぱねられた
「でも今の俺の方がいいだろ」
子供のお前には子供の俺
オトナのお前にはオトナの俺、な
「初めてキスした時俺が言ったこと、忘れてるお前が悪い」
二人の時は何て呼ぶんだっけ、覗き込んで合わせた視線に熱を乗せる
「はよ、言ってみ」
「・・・消太、」
「ん、やっと思い出したか」
随分長いこと忘れてたじゃないか
ベッドの上でしか呼ばないのは約束と違うからな
そう言うと、顔を顰めた彼女が俺をまた睨んだ
「だからってこんな・・!」
「文句を聞く気はないよ」
念のため掛けておいたドアの鍵を開錠し、手招きをする
帰ってさっきの続きをしよう
「思い出すなら最後までちゃんと思い出せ、まぁこれでもう忘れないだろうが」
捨て台詞のようにそう言うと、背中にバシッと鞄が飛んできた
———
「今の俺の方が好きだろ」
低く甘い声が耳元に響いて、子供のようなその問いかけに私は思わず吹き出した
「まさか、昔の自分に妬いてるの?」
「可愛い面して毎晩お前をオカズにしてる、
純粋どころか大概クズだぞ、あいつ」
「やだ聞きたくない、ふふ、やめて」
不服そうに眉を寄せた彼は先程と同じ手付きで、白いボタンをゆっくりと外していった