第16章 思い出すなら最後まで
薄暗くなった夕刻、校内の見回りが終わり
ふと、階段上のドアに引き寄せられる
屋上に来るのなんていつぶりだろうか
「わ、相澤先生・・!」
開いた扉の先で振り向いたのは、風に髪を靡かせる愛しいひと
「ここは立ち入り禁止ですよ、薬師センセ」
「ふふ、サボってるのバレちゃったな」
ったく、タイムカードは押されてねェし
デスクに携帯は置いたままだしよ
こんな時間にどこにいるのかと思えば
「わざわざこんな所で思い出さなくても
本物がいるだろう、」
どうせ俺とのことだろ、そう言うと彼女は驚いた顔をした
「当たり、さすが相澤くん」
立ち入り禁止場所での思い出があるなんて、優等生だった薬師先生にもよっぽどの悪友が居たんですね
そう言うと彼女は「秘密にしてね」と微笑んだ
彼女にとっても大切な思い出なのだと思うと柄にもなく浸ってしまいそうになる
変わらず遠い空を見つめるその手を引き、壁の陰で抱き締めた
「本物が来ても思い出優先とは、いい度胸だな」
そう言って腰に手を回すと、身の危険を感じた彼女が逃れようとする
「ちょ、相澤くん!何し、て」
「もっとちゃんと、思い出させてやろうか」
慌てる彼女を抱き締めたままそう囁いて
コツン、と額を合わせた
「めぐ・・、キスしたい」
「〜〜!!!!」
驚きに見開かれる彼女の瞳
ちゃんと、覚えている目だ
「したいのは、俺だけか?」
両腕を壁に押さえつけ閉じ込めて囁くと、彼女が泣きそうな顔で俺を睨んで
その顔は逆効果だとこの前教えただろう
「ん、はぁ、っ」
赤い唇に遠慮なく吸い付いて舌を絡ませれば
呼吸ごと全部、お前は俺のモンだ
口付けながらブラウスのボタンを一つずつ外し、露わになった首筋にゆっくりと舌を這わせて
「ちょっ、相澤くん、だめ、!」
「こんな感じじゃ、なかったか、?」
にやりと笑うと紅い顔で抗議の声をあげ、それがまた俺を煽る
抵抗する気があるのか無いのか、その弱い力がたまらなく愛おしいよ
「ここ学校だよ・・!?相澤先生・・!」
何そのいやらしい台詞、お前に先生と呼ばれるのも悪くないがそれはまたの機会に、
そんなことを考えながら彼女の髪を耳にかけた
「ちゃんと思い出せよ、手伝ってやるから」