第15章 こうやって堕ちていく
ちらりとこちらを見た彼女が恥ずかしそうに下を向いて呟く
「ふふ、相澤くん、顔から湯気が出そう」
「・・それはめぐも同じ」
「っ!!」
なんとか上手く呼べていたようだ、彼女の顔を見て安堵の息を吐いた
「だめだ、恥ずかしくて幸せで、今日絶対眠れないや・・」
「わかる」
つられて俺も両手で顔を隠した時、一瞬強く吹いた風が彼女の膝の上のハンカチを空へと舞い上げた
「わ!あ、っ」
慌てて追いかけた彼女は、柵から落ちるギリギリのところでひらりと舞うそれを捕まえる
そこまではよかったが
手を伸ばした彼女はそのままぐらり、と態勢を崩した
「ちょっ、危ねェ!」
駆け寄った俺の腕が直前のところでその身体を引き寄せ抱きしめる
鼻を掠めた甘い香りに頭がくらくらした
「おい、何階だと思ってる・・!」
「相澤くんが守ってくれるかなって、ちょっと頑張っちゃった」
ごめんね、腕の中で俺を見上げた彼女はそう呑気に笑っていて
柔らかくて華奢なその感触が、全身に電気が走るように俺を痺れさせた
「相澤くん、もう大丈夫、だよ」
いくら無自覚でも、仕組んだのはそっちだ
ゆっくりと彼女の方を向くとコツンと額を合わせて、不思議そうに俺を見上げるその瞳を見つめた
「相澤くん・・?」
「あのさ」
本当はもう少し日が経ってから、もっとちゃんとしたタイミングでする予定だったのに
「めぐ・・、キス、したい」
返事なんて待てない、真っ赤な顔の彼女を引き寄せるとちゅう、とその唇に触れた
柔らかくて温かくて、甘い
これ以上はだめだ、そう分かっていても全然足りなくて
「もう一回、したい」
「だ、め」
「したいのは、俺だけ?」
「き、聞かないで・・っ」
こうやって堕ちていくんだな、なんて他人事のように俯瞰して
「相澤くん、あの、」
「悪い、少し黙って・・」
先ほどよりも少しだけ長く唇を触れ合わせると、彼女は慌てたようにその潤んだ目を閉じた
このまま食べてしまいたい、
舌を入れて、絡めて、吸って、呼吸を奪ったら溶けた彼女はどんなカオをするのだろうか
「あ、い、ざわくん」
さすがに次は怒られるかな、そんなことを思いながらまたコツンと額を合わせた
「・・やっぱり、消太って呼んで」