第14章 解決できそうですか
「は?風邪ひいた?」
「わりぃ、ショータ・・」
四月下旬の土曜の朝、家を訪ねた俺にゴホゴホと咳き込みながら白雲が言った
「お前が寝込むなんて珍しいな・・、山田も急用で来れないみたいだし、今日の予定は延期だな、ゆっくり寝てろ」
「いや!それが、悪いんだけどよ・・!ショータ今日のプラン実行してくんね?おすしずっと楽しみにしてたんだ!」
「・・は?おすしが?」
呆れた声を漏らした俺に、白雲は真剣な表情で言葉を続ける
「めっちゃ楽しみって昨日も言っててさ、ドタキャンなんて可哀想だろ?!」
・・何言ってんだこいつ、熱で頭までやられたか?
“土曜の学校でおすしを遊ばせようプラン!”
「ショータ、お前だけが頼りだ・・」
そう言って派手に咳き込んだ白雲は額に手を当てると、よろよろと壁に手をついた
「俺は別にいいけど・・」
ということで俺は今、おすしを抱えて学校の裏庭に来ている
アイツが寝込むなんて明日は雪でも降るんじゃないか、ベンチに腰掛け猫じゃらしを取り出しながらそんな事を考えていた
まぁおすしと過ごせるのは悪くない、自分の顔がどんどん緩んでいくのを感じながら
他にも色々持ってきてるから後でな、じゃれるおすしを撫でたとき後ろの窓から俺を呼ぶ声が聞こえた
「あっ、見つけた、相澤くん!」
「!?」
「すっごく探したんだよ〜!」
「え、あ、薬師、さん・・?」
探した? 俺を?
固まる俺を他所に、優しく扉を閉めた彼女は当たり前のように隣に座った
「その猫ちゃん、とっても可愛いね!」
「え、ああ・・、おすしって名前・・」
「ふふ、名前もとっても可愛い
相澤くんにすごく懐いてる、いいなぁ」
さ、触ってみる・・?
動物慣れしているのか、彼女はあっという間におすしを手懐けて
「可愛いね、おりこうさんだね、」
柔らかな手に触れられたおすしが気持ちよさそうに目を細めた
可愛いと可愛いの融合・・、その光景に顔がじわりと熱くなって
なぜここに居るのか、そう開きかけた口を思わず噤む
ずっと見ていたくなっちゃうね、なんてとろけるように笑った彼女から目を逸らし「・・わかる」とだけ返した
風の奏でる木々の音が心地よく鼓膜を揺らして
結局何も言えない俺に、先に目線を合わせてきたのは彼女だった