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◉拗らせろ初恋◉【ヒロアカ】

第12章 むかしのはなし


やべ、俺また寝て・・


来週の定期試験に備えるべく土曜に一人訪れた図書室
煩いあいつらと一緒じゃいつも追い出されてしまうし、そもそも勉強できた試しが無い

二時間、いや一時間くらいはちゃんとやっていたはずだが気づけば机に突っ伏したまま記憶がなくて

微睡んでいたい頭をゆっくりと起こし椅子に座り直した時、肩に掛かる心地の良い重さに気が付いた


「・・んだこれ」
視界の両端に映った優しい薄紫色、触れた確かな感触に一気に目が覚める
三つほど隣の自習席を見ると教科書と睨めっこしている横顔があった


「あの、これ・・」

恐る恐る近づき声をかけると、何か聞いていた彼女がイヤホンを外して
俺は無造作に畳んだブランケットを差し出した



「あ!おはよう、寝ると少し体温下がるから・・それ掛けちゃった」

勝手にごめんね、申し訳なさそうに眉を下げふわりと笑った彼女に早くなる胸の音


クラスの奴以外と話すのは初めてだからか
女子と二人になるのが初めてだからか

それとも、目の前のこの子だからか


「だ、大丈夫?すごく顔色悪いよ・・!?」

そう言った彼女は心配そうに俺の手を握り、もう片方の手で俺の額に触れた


「な、何、して・・!」

突然の行動に狼狽える自分の声が静かな部屋に響く
そんな俺を他所に、彼女は真剣な顔をして此方を見つめた


「・・慢性的な睡眠不足と栄養不足、ビタミン全般は特に足りてないなぁ、ごはんちゃんと食べてる?」

「へ」

「私の個性 ”処方”なんだ、ざっくり言うと触った相手の健康状態がわかる感じ」

ふわりと笑ったその表情に、触れられた右手と額、それどころか身体中が熱くなっていく


「・・そう、ですか」

普通科か、なんて肩ボタンの数をちらりと確認して
煩い心臓の音を掻き消すようにいつもより少し大きな声で返事をした


「体育祭で見たことある、ヒーロー科の人だよね?」

沢山エネルギー消費してる分いっぱい食べていっぱい寝なきゃね、優しく笑った彼女の膝にブランケットがふわりと広がる


「・・それ、ありがとうございまし、た」

「暖かくてよく眠れたでしょ、ふふっ」

「〜〜〜!!」


そそくさと席に戻り閉じていた問題集を開く
どこまでやったっけ、何ページだっけ、集中しろ俺
目に入る文字列はどれも無意味に思えて、彼女の笑った顔を消してはくれなかった
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