第11章 それは誰のせい
「・・ちなみになんですけど」
気怠さの残る身体に水が沁み渡る
此方にグラスを返した彼女がちらりと俺を見上げた
「次はどんな風に抱いて欲しいか、って?」
「ち、違います!」
シーツに顔を隠しながら彼女が言いにくそうに呟く
「相澤くんの”初めて” は、誰に・・」
私ばっかり暴露して納得いかないよ、そう頬を膨らませた彼女が俺の手に指を絡めた
「そんなこと、聞いてどうする」
「別に、知りたいだけですけど・・」
簡単に引き下がらないのはわかってて時間を稼ぐ
何を話そうか、どうやってその顔を焦らせようか
反応がいつも可愛くて、性格が悪くなっていくのは自分でも実感している
「教えてやってもいいが、」
「本当!?」
「ああ、全く問題ないよ」
お前の焦った顔が見られるなら何だって教えてやるさ、そう口には出さずゆっくりと身体を起こして彼女の肩を抱き寄せた
「潜入捜査で1、2回あった気もするがあとは専ら”そういう店”だな」
面倒だから基本はひとりで処理するよ、そう言って窺うようにじっと見つめればその頬がだんだんと紅みを帯びて
自分から聞いといてその反応
ほんと、堪らないよ
「特定の相手が居なくて嬉しいか」
「・・べつに、過去のことだし!」
図星を突かれ慌てて下を向いた彼女に、思わず口角が上がる
さらに焦らせたい俺はそのまま言葉を続けた
「一人でするのはだいたい週三、記憶の中のお前にもだいぶお世話になりました」
その節はどうも、そう言って軽く頭を下げると予想通りの真っ赤な顔、思わず笑いが零れる
思った通りの反応が愛おしい
「どうだ、聞いて満足したか」
「そ、そこまで聞いてない!というかそれって初めての相手ヴィランじゃ・・?」
「はい、この話はおしまい」
肩に広がった長い髪をはらりと避け、露わになったその首元に唇を寄せた
「も、もう今日はダメだからね!」
真っ赤になった彼女がすかさず戦闘態勢をとる
彼女お決まりの枕攻撃といったところだ
「で、次はどんな風に抱いて欲しいって?」
予想通り投げられたそれを躱す
そしてその一歩先、足を絡めて身体を押さえ込んだ
「俺の勝ちだな」
「うるさい、どいて・・っ!」
その顔は逆効果だ、そう囁いて遠慮なく体重をかけていく
「極秘情報を教えたのに、ツレないね」