第10章 それは今夜のお誘いと
「あともう一ついいか」
「今日は質問がいっぱいだね、嬉しいな」
にこにこと幸せそうに笑いながら彼女が食事を頬張る
「・・子供、欲しくないか」
「えっ」
さすがに彼女は驚いたようで、その丸い瞳を更に丸くして俺を見つめた
「あ、相澤くん、欲しいの・・?」
「質問に質問で返すな、お前の気持ちが知りたいんだ」
ぱちぱちと瞬きをした彼女が次の言葉を考えているのがわかる
「わ、私はできれば欲しいけど、、相澤くんはいらないって考えてるかと思ってたから」
予想通りの回答に溜息をついて、また一口酒を沁み込ませた
「俺は欲しいよ、俺とお前の子供」
子は鎹って言うだろ、とは絶対に言えない
これから先どんな事があっても
そう、例え俺が死んだとしても、だ
それでも俺から離れられないように、なんて
男として最低の本音を隠して綺麗な言葉を並べる
「もっとお前と、家族になりたい」
もちろんこれだって本音だ、そう心の中で言い訳をして
お前が母親になる姿も見たい、愛が形になった時どんな風にそれを慈しむのか、二人で大切に育んでいきたいと
ちゃんと、そう思ってる
「いい父親になれるよう精一杯努力するよ」
そう言って、食事を頬張ったまま固まる彼女の手を握った
「だが妊娠も出産も大変なのは圧倒的に女性側、
もちろん家事や俺にできる事は全てするつもりだがお前は仕事もあるし、だからお前が欲しいと思ったタイミングで———-」
「っほしい、い、いま!」
目をキラキラさせる姿を見て思わず笑みが溢れる
「それは今夜のお誘いと取っていいか?」
「っちが、そう、いうんじゃないけど!」
「この後が楽しみだな」
「もう!すぐそういうこと言う!」
お前も同じ気持ちでよかった、
守るモンが増えるのはヒーローとしてはしんどいかもしれないが
お前も子供も絶対に守る
幸せにするよ、手に力を込めてそう言うと彼女は目に涙を浮かべて微笑んだ
「んじゃ、今日からコレは不要な」
「いつシてもできるわけじゃ・・」
「数打ちゃ当たる、任しとけ」
ベッドに寝そべった彼はそう言うとぽんぽん、と隣を叩いて
「相澤くん、なんか嬉しそうだね」
「細かいことはいい、早くおいで」
いつもより少し上機嫌な彼がお酒の香りを漂わせて、私に甘く手招きをした