第10章 それは今夜のお誘いと
「よォ!イレイザー!今日メシ行こうゼ!?
ってアレェ!?もう帰り!?」
「ああ、悪いな」
定時きっかり、職員室を出た俺はいつもより早足で廊下を歩いて
「あら、マイク知らないの?金曜はダメなのよ金曜は♫」
「金曜は、って・・!基本何曜でもダメだろ!
昔っからホント付き合い悪ィんだからショーちゃんは!」
———
「ただいま、ってまだ帰ってねぇか」
そう呟いて薄暗い部屋の電気を付ける
シャワーを浴び部屋着に着替えると、もはや毎週恒例となった自問自答を始めた
何もしねぇのもアレだし野菜でも切るか・・それとも掃除でもするか・・
普段、どれだけ彼女に甘えているかを痛感する反省タイム、今日こそは何か一つでも成果をあげたい所だ
「めぐ 、早くしないとまずいわよ?
相澤くんは今週も定時で帰ったわ♫」
「ええ!?早すぎる!」
これでもかなり急いだのに、と支度を急ぐ私を香山さんが見つめた
「金曜は二人で特別な事でもしてるの?」
「特別って程ではないんです、普段話せる時間が少ないのでただゆったり夕食を・・」
「何ソレ!青い!!」
「さすが新婚サン!あの相澤がねェ・・」
オレも早く結婚シタイ...山田くんの涙声を背に、私は足早に職員室を後にした
「ただいま、遅くなってごめん!
・・エプロンしてどうしたの、ふふ!」
笑いを堪えながら部屋に入った彼女が俺の頬に口付けを落として
「今週もおつかれさま」
「、おう」
数十分後、結局彼女が準備をした鮮やかな食卓に二人で向かい合う
今日も何もできなかった俺に彼女は悪戯っぽく笑いかけた
「かんぱい」
一週間の出来事を報告し合うこの時間
ベッドで抱き合って眠るのもいいんだが、やっぱり顔を見てちゃんと話がしたくて
埋めたいんだ、離れていた時間を
「幸せだね」
「ああ」
楽しそうに話すその顔が愛しくて、何時間だってこうしていたいと思ってしまう
「なぁ、前から聞きたかったんだが」
「ん?なぁに相澤くん」
「いつまでそう呼ぶんだ、お前ももう相澤サンだろ」
いい加減名前で、なんて言ったら笑われるだろうか
「十年以上もそう呼んでたからなかなか抜けなくて・・、善処します」
「ああ、頼む」
カランと氷の音をさせて口に含むと、酒の味が疲れた身体に沁み込んだ