第9章 たまには君から
「はぁ〜〜さすがに疲れたね!」
シャワーを浴び終えた彼女が髪を拭きながら笑うと、石鹸の香りがふわりと漂った
「そうだな」
「今日はぐっすり眠れそう・・」
ひと足先にベッドに入っていた俺の向かいにちょこんと座った彼女が、窺うように俺を見つめる
「ゆっくり休め」
頭を撫でながら額に口付け、気持ち良さそうに細められたその目に心が満たされていく
「どうした」
「・・今日は、しないの?」
「疲れたんだろ、さすがに」
全てお見通しの悪い笑顔でそう言った彼が、私の髪をくるくると弄んで
「もう、どうして今日に限って意地悪なの」
「何のことだか」
お手洗いに行った時偶然耳にした会話を思い出す
女の子達が相澤くんの事を素敵だと話していて
賑やかなその声を思い出すと心がきゅっとなった
「相澤くんは私の旦那さんだって、ちゃんと感じたくなったのになぁ」
真っ赤になって言う彼女に嗜虐心が疼いて、上がってしまいそうな口角を意識的に下げる
「へえ、じゃあ奥さんから誘ってみたらいいんじゃないか」
「なん、なんで・・っ」
「いつも俺ばっかり求めてる、お前から誘われると嬉しいよ」
紅い顔で口をぱくぱくさせる彼女が可愛くて
「嘘だよ」、そう言おうと手を伸ばした時
「・・やればいいんでしょやれば!」
予想に反してそう言った彼女は意を決して俺の膝に座ると、紅い顔を近づけゆっくりと唇を重ねた
「ねぇ、し、ようよ」
寝巻きの中を恐る恐る撫でた指がさらりと俺の髪を耳に掛けると、口から頬を啄んだ唇が首筋を軽く吸って
完全なる思考停止、頭が真っ白になる俺に彼女は最大級の追撃を与えた
「愛してるからシたいの、消太、お願い」
甘く囁いた唇に噛まれた耳はじんじんと熱くなり、頭に血が上る
「・・いい加減にしないと痛い目見るぞ」
「え、何で怒ってるの!?」
今日は優しくできないからな、お前が悪い、そう言っていつもより少し乱暴に組み敷くと、彼女は紅い顔で幸せそうに笑った
何度だってわからせてやる、
不安になる余裕なんか無いほどに
結局一度じゃ足りなくて
まだ大丈夫か、そう尋ねると彼女はその細い腕を俺の首に絡ませた
「今日はやけに素直だな」
「・・浮気されたらやだもん」
「まだ言うか、寝られると思うなよ」