第6章 満点をきみに
「相澤くん、!っちょ、と待って、っ」
ベッドへと彼女を運んだ俺は、その手をシーツに縫いつけ口付けを繰り返す
湯気が出そうな紅い顔をして、ぐい、と弱い力で押し返す華奢な手
「・・そういうの、いいな」
指を絡め手の甲に口付けると、彼女の緊張が伝わった
泣かしといて悪いが、もう抑えられない
一貫して自己中、我ながらおめでたい奴だ
そう思いながら涙の跡に唇を寄せた
二人の吐息だけが静かな部屋に響いて
「ねぇ、待って、そういうことする、なら
せめてシャワーしてから、がいいし、
だってほら、初めて相澤くんとするなら
ちゃんとしたいから、そ、それにまだ食器
も片付け」
煩い唇は強引に塞いでしまおう、
昔から変わらない、焦るとめちゃくちゃ喋る彼女の癖に意地の悪い笑みが漏れた
「待たないよ」
服をずらし彼女の白い首筋に吸い付くと
懐かしくて、苦しくて、好きで好きでたまらなかった香りがする
「わ、私、怒ってるんだからね!」
「好きだ、めぐ、こうしたかった」
「怒ってるんだってば!」
服に手を忍ばせると彼女の身体が跳ねて
「やっ、だめ、汗かいたままじゃ、集中で
きない、し、全然反省してないでしょ!
もう!調子に乗らないで、」
はぁはぁと息を上げ俺を睨む彼女が堪らなくて、全身が熱い
「調子には乗るだろ、好きな女が自分と同じ
気持ちなんだ、確かめたくて触れたくて
気が狂いそうだ」
なぁもうこんな状態だ、それでもだめか?
彼女の手を捕まえると早鐘を打つ心臓に重ねた
「めぐ、愛してる」
「お前の全部、俺にくれないか」
数秒固まった彼女は抵抗するのをやめて
俺を見つめて少し考えたように揺れたその瞳が潤んでいく
それは今も、綺麗なままだ
「・・シャワーさせてくれたら、
わたし、機嫌直してもいいよ」
そう言ってやっと微笑んだ彼女は
愛してるってもう一回言って、と幸せそうに呟いた
「ふふ、大丈夫、逃げないから」
やっと捕まえた彼女が、俺の腕を簡単にすり抜ける
本当にシャワーがしたいだけなのか
俺の思うままに流されたくないのか
ここにきて生殺しとは
「おあずけ食らった分、覚悟しとけよ」
悶々と疼く身体を必死に落ち着かせ、その部屋を後にした