第5章 答え合わせをさせて
一旦自室に戻ると、山積みの書類から急ぎのものだけを済ませて
時計の針はあっという間に約束の時刻を指していた
夕食時だ、共用スペースにも誰かが居る可能性が高い
褒められた行き方じゃないが
面倒な奴に見られるよりは幾分マシか、と捕縛布を手に取る
女性の部屋にバルコニーから侵入するなんて言語道断、ヒーローとしても教師としても一発アウト、我ながら呆れるよ
「えっ!そこから来たの!?ふふっ!」
コンコン、と外から窓を叩くとエプロン姿の彼女が急いでドアを開けた
「ヒーローらしい登場だね!」
「どう考えてもヴィランだろ」
俺の葛藤を他所に呑気に笑っているその顔に思わず溜息がこぼれる、靴を脱ぎ揃えると彼女が笑い声を漏らした
まだいくつか段ボールの残る部屋は白と薄い紫色で纏められている
今もこの色好きなんだな、なんて懐かしさに浸ったのも束の間
部屋の端に置かれたベッドが嫌でも視界に入り、どうしようもなく落ち着かない
整えられたシーツ、自分の免疫の無さに汗が滲む
バクバクと音を立てる心臓を落ち着かせようと数秒目を閉じた
ここからは作戦も何も無い、俺の身勝手な想いを伝えるだけだ
今夜俺は、お前が嫌がることをするだろうか
明日からもこうして、お前の笑顔が見られるだろうか
「相澤くん?
あの、どうぞ、適当に座ってね?」
テーブルに並ぶ鮮やかな料理が目に入る
俺の為に用意されたそれにどう頑張っても口元が緩んで、できるだけそれが悟られないようにと片手で隠しながら席に着いた
お水どうぞ、軽い音とともに置かれたのは見覚えのあるペアグラス
「・・お前、これ」
俺がそう呟くとなぜか彼女はぎくりとして言い訳するように続けた
「あ、これ、さっき買ったやつ、可愛いから早速使っちゃおうかなぁって・・!」
ありえない、違和感しかない、俺が使った後に「彼」が使うのか?
そんな無神経なことをする奴じゃないと断言できる
学生時代、白雲や山田には市販の菓子、俺には手作りのものだったことを思い出す
「彼氏」だった俺に対して彼女はいつもさりげなく特別を与えてくれていた
「俺が、」
「ごめん!い、いま準備するね!」
全く以て腑に落ちない、訝しげに見遣ったその顔が焦りに歪んで、キッチンへと逃げる背中をじっと見つめた