第4章 ビタミン剤なんかよりよっぽど
ああ、そうか
昨日潰れた俺を山田が・・
ズキズキと痛む頭と胸焼けに目を覚ます
運んでもらっておいて言えた事じゃないが、次からはカーテンも閉めていけ・・
土曜の朝、部屋に差し込む明るい日差しに理不尽な苛立ちを向ける
「一緒に居られるだけで充分」
そうですか
いかに自分が舞い上がっていたか痛感するよ
本当アホらしいよな
まぁその男が居なかったところで、俺はそもそもエントリーする資格が無い
今日は意地でも起きねェぞ、
二度寝をする前にカーテンを閉めようと重い身体を起こしふらりと立ち上がる
連日の激務に昨日の酒
からのこの状態だ、我ながら合理性の欠片もない
ゆらり、とカーテンに手を掛けたとき
向かいのバルコニーから一番聞きたくて一番聞きたくない声がした
「あ!相澤くん、起きた!?」
ほっとしたような顔で手を振るその姿に溜息が漏れる
おいおい、何張り込んでんだよ・・
無視するわけにもいかずドアを開けると彼女はとても嬉しそうな顔をした
「かなり呑んだみたいだから心配してたの、
酔い醒まし作ったんだけど・・
持って行っても大丈夫かな?」
相変わらずのお節介体質も健在、か
これが彼女の通常運転、誰にでも同じようにするんだろう
わかっているくせに速まる鼓動に腹が立つ
大事な奴が居るんだろ、他の男にそんなことするもんじゃないよ
無自覚な優しさに苛立ちが抑えられなくて
「・・・酔い覚ましも心配も、不要だ」
言い放った途端、酷く傷付いた彼女の表情に
ドクン、と心臓が嫌な音を立てる
「・・ごめんなさい、迷惑だよね、
今日はゆっくり休んでね」
そう言って彼女がくるりと背中を向けた
——違う、待ってくれ、
そんな顔させたいんじゃない
お前は何も悪くないのに
ああ、これじゃ
前と何も変わってねぇじゃねぇか——
「めぐ、!」
久しぶりに口にしたその名前に、部屋に入ろうとした彼女が立ち止まる
「待ってくれ」なんて、想像していたよりもずっと情けない声が出た
後悔はもう沢山なんだろう
俺といない方が彼女も幸せだ、なんて結局自分可愛さに突き放したんだ
こいつが他の誰かを想っていたとしても俺のやる事は変わらない
次はもう間違えないと、そう決めたんだ