第24章 口止め料は甘い香り
「めぐさんから、何貰ったの」
そう尋ねると、顔を輝かせた彼女は鞄から小さな瓶を大切そうに取り出した
「めぐさんと同じ匂いのするやつ、わけてもらったの!」
赤いリボンの掛かったそれはこの年頃の女の子にとってとてつもなく特別な物なのだろう、大切そうに眺めるその顔をアイツにも見せてやりたいとさえ思った
果たして俺は
それに釣り合う、いやそれ以上の条件を彼女に提示することができるだろうか
にやついて視線を落とすと、先程目の前で描かれたそれが目に留まった
「エリちゃん、その秘密のお話、教えてくれたら
お礼に遊園地に連れて行くよ、どうかな」
「ゆ、ゆうえんち・・!?」
描いたそれと俺の顔を交互に見た彼女が
持っていた瓶を鞄に仕舞って
俺は思わず笑みを漏らした
「少しの間なら、俺は君を学校の外に連れ出せる」
もちろんめぐさんやルミリオンも一緒にだ、そう付け加えるとにっこりと微笑んだその顔
「みんなで、ゆうえんち・・!!」
「秘密のお話、聞かせてくれるかな」
一瞬で輝いたその無垢な瞳には
報酬をチラつかせ少女に取引きを持ち掛けた、
大人げない男が映っていた
「めぐさんの宝物はね、せんせいなの!
ずっと一緒にいるのに、まだ胸がきゅんきゅん
して、かっこいいなぁって毎日思ってるって」
「・・へえ」
「もう一つのたからものは、せんせいから
もらった指輪でね、
寝る前にかならず見せてくれるんだよ」
まだまだあるよ!そう楽し気に話す彼女の言葉はどれも俺を動揺させるものばかりで
アイツ、子供相手に何惚気てんだ・・、と
聞いてるこっちが恥ずかしくなる
「だいすきすぎてね、また嫌われたらどうしよう
って考えると泣いちゃうこともあるって」
せんせい、めぐさんのこときらいだったの?
そう言って丸い瞳が俺を見上げた
「・・ずっと、好きだよ」
ったく、何がそんなに不安なんだ、
呆れて溜息が漏れる
それ以上はもう聞いていられず、ガシガシと頭を掻き呼吸を整えた
「先生に話したこと、めぐさんには内緒だよ」
すっかり熱くなった顔を片手で隠しながら
情報提供の謝礼とはまた別、口止め料として
俺はポケットから飴を取り出した