第23章 種明かしは急がない
「相澤くん、急にどうし・・っ」
狼狽える彼女を無視して深く深く口付けると、いつもよりも強い力で胸を押し返される
舌を滑り込ませた途端に口の中に広がった、甘ったるい砂糖の味
やめて、と発せられた声に苛立ちが募り、逃がさないように頭を押さえつけた
「あんな顔、すんなよ・・」
白雲に照れて微笑んだ顔
好きだと言われて驚いた顔
幸せそうに笑った顔
掻き消そうとしても、焼き付いて離れない
「ちゃんと、話そ、う」
「うるさい」
俺と居るよりアイツと居る方が楽しいだろ
悔しいくらいお似合いだったよ
彼女を傷付ける言葉がいくつも脳裏を掠める
口を開けばそれらを吐いてしまいそうで、黒い感情ごと飲み込もうと乱暴に唇を貪った
「はぁ・・っ、も、やめ」
「俺のことだけ、考えてろ」
傷付ける言葉の替わりに口を衝いたのは、情け無くて余裕の無い本心
こんなの
アイツに妬いてると白状したようなものだ
「え・・、?」
案の定、その言葉に何かを察した彼女が動きを止めた
「相澤くん、何か勘違いして・・」
勘違い、ね
アイツに好きだと言われた時、お前はどうして何も言わなかったんだ
俺以外考えられないと、なんでそう言わなかったんだよ
悔しくて腹立たしくて、下を向いたまま彼女の身体を離すと
温かい手が優しく俺の頬に触れた
「まだ離さないで・・、もっと、したいから、」
そう言葉を紡いだ唇はゆっくりと俺に触れて、遠慮がちに舌が差し込まれる
「・・!」
動揺のあまり顔を離そうとすると、紅い顔の彼女が俺の服をぎゅっと掴んだ
「めぐ・・っ」
ぎこちなく絡ませたそれが離れると
「言えって言われたからじゃないよ」と呟いて彼女が目を伏せる
「白雲くんと居る時も、ずっと相澤くんのこと考えてた」
本当は相澤くんに見つけて欲しかったの、そう言って彼女は恥ずかしそうに笑った
「こんなに好きなのに、伝わってない、かな」
伝わってないなら、ちゃんと伝えたいから
相澤くんがしたいこと全部、しよう?
「ぜんぶ、あげる」
小さくもはっきりと発せられた声と涙を溜めた不安気な瞳が、心を覆っていた苛立ちを徐々に消していく
たとえアイツがめぐを好きでも
こいつの気持ちは、ちゃんと俺にある