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◉拗らせろ初恋◉【ヒロアカ】

第23章 種明かしは急がない


雲のような綿菓子が
彼女の口に運ばれては溶ける

見るからに甘そうなそれは嫌でもアイツを連想させて

今すぐゴミ箱に捨ててしまいたい衝動を抑え
彼女の口元をただぼーっと眺めていた


「相澤くん、疲れちゃった・・?」

私のせいで本当にごめんね、申し訳無さそうにそう言って俺の額に触れようとした手を無言で捕まえる

今は、診られたくない


「お前、さっきアイツに・・」

「ん?」

「いや、何でもない」


そのまま彼女の手を引き、祭りの喧騒から逃れるように夕闇を歩く
軽やかな下駄の音だけがカランコロンと響いた


「あのね、線香花火がひとつだけ残ってるの
 相澤くんと、したくてね、」

重い空気を破ろうと彼女が発した明るい声を、俺の沈んだ声が遮って


「悪い、今は・・気分じゃない」

「そ、そっか、ごめんね」


あんなにお似合いな姿を見せられた後だ

お前、アイツに好きだって言われて嬉しかったかよ


口を開けば彼女を責める言葉が出てしまいそうで
目も合わせず、ひたすらに黙って彼女の手を握り締める

殆ど人通りの無い場所を見つけ古びたベンチに向かって歩き出すと
黙る俺を気遣うように、彼女が遠慮がちに声を発した



「相澤くん、さっきね、」


その言葉に、身体中に緊張が走り俺は足を止める


何を、言うつもりなんだ



「さっき、白雲くんに、」



その先は、聞きたくない


虫の声だけが時折響く静寂の中、握り締めた手を強く引いて彼女を抱きしめると、俺はその唇を強引に塞いだ


「何も言うな」

「んん・・、っ!」


何度唇を重ねても啄んでも、思い出すのはアイツの言葉ばかり
絵のようにお似合いの姿が頭から離れない





 「俺の方が好きだって、わからせてやる」






は、言ってくれるじゃねェか


目の前にいる彼女に八つ当たりしたって傷付けるだけだ、そう分かっていても蓋をしていた黒い感情は容易に溢れて


「なぁめぐ、どうしたい」

紅い唇を指でなぞると、目を潤ませた彼女が眉を下げる
あの時俺が現れなかったら、あいつはこの味を知ったのだろうか


白雲、お前をどれだけ尊敬していても

お前みたいになりたいと思っていても


「なぁ、どうしたい」

「どう、って・・?」


「もっとしたいって言えよ」


こいつだけは絶対に譲らない
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