第12章 【一筋の涙】
クリスマス・パーティの日、クリスとハーマイオニーは身支度の為に早めに大広間を出た。
正直言わせて貰えば、パーティー嫌いのクリスにとってこれから始まるイベントは苦痛以外の何物でもなかった。が、これもひとえに将来の為、もっと言えば強力なスポンサーを捕まえるためには、何が何でも出席しなければならなかった。
「ところでクリス、貴女ドレスはどうしたの?」
「4年生のクリスマス・パーティーで着たのを、ウィーズリーおばさんに頼んで送って貰った」
4年生の時のドレスが入るかどうか微妙だったが、もし入らなければ魔法で少し大きくしようと思っていた。
将来の為の猛勉強が功をなしているのか、最近クリスの魔法の腕はメキメキ上達していて、ハーマイオニーほどではないが教科書に載っているような呪文なら殆ど出来るようになっていた。
送って貰った荷物をほどき、黒いAラインのシンプルなドレスを取り出す。背丈はあまり変わってないが、問題は他にある。
恐る恐るドレスを着ると、まるでこの日の為にあつらえたかのようにピッタリだった。
「……ショックだ、4年生の時のドレスがピッタリだ」
「それ、嫌味も含まれてるの分かってる?」
クリスとしては、もう少し胸の辺りが窮屈だったら嬉しかったが、ハーマイオニーにはそう受け取ってもらえなかったみたいだ。
当のハーマイオニーは、流石に4年生の時のドレスではなく、新しいドレスを着ていた。クリスはその姿をジーッと見つめた。
「な、何?何か変なところある?」
「……ない」
明らかに4年生の時より成長している彼女の胸を見て、クリスはぶっきらぼうに答えた。
* * *
仕度を終えて談話室へ降りていくと、既にネビルが待っていてくれた。ネビルは濃紺のパーティローブに身を包み、髪の毛を整髪料で綺麗に整えていたのがクリスとしては好印象だった。
「やあ、ネビル。待たせてすまなかったな」
「クリス!あの、その……キレイだよ」
「ああ、ありがとう」
頑張ってくれたネビルには申し訳ないが、クリスは外見の賛辞には慣れていた。クリスがサラリと流しても、ネビルは嫌な顔1つしなかった。こういう素直で決して驕らないところがネビルの美徳だと思う。