第1章 The summer vacation ~Charlie~
何も遮るものがない夏の夜空は、仕事柄見慣れた俺からしても綺麗だと思った。
満天の星空に、背中越しにクリスの感嘆のため息が聞こえる。それを聞くと、俺はなんだか心が温かくなった。
「すごい……星空がこんなに近い」
「ドラゴンの背中だと、もっと近くに感じられるよ?」
「それは凄いな。機会があったら是非乗ってみたい」
「もちろん!大歓迎だよ!きっと気に入ると思う。ううん、絶対に気にいる!俺が保証するよ!!」
「ははっ、ありがとう!」
クリスが笑った――その自然な笑い声を聞いた瞬間、俺は心底嬉しくなった。
良かった、やっぱり人間には笑顔が必要だ。笑顔は人を幸せにするんだ!!
クリスは俺の背中にしがみつきながら、時々片手を夜空にかざして星を掴むふりをしていた。
童心に帰り、俺もそれを真似る。そんな事をしながら、俺たちは飽きることなく空中散歩を楽しんだ。
明け方近く、ママにばれない様に窓からクリスを部屋に戻す。俺は箒に乗ったままクリスに「おやすみ」と挨拶をした。
ひと眠りして、また朝になればクリスの顔が見られるのかと思うと、なんだかちょっと嬉しくなった。
「それじゃあ、また朝食の席で」
「ああ……あ、ちょっと待った」
「なにか――」
クリスが窓辺から身を乗り出し、俺の頬にチュッとキスをした。
思ってもみなかったまさかの行動に、俺は頭が真っ白になって、バランスを崩し、箒から落っこちた。
「お、おーい!大丈夫か!?」
「痛てて……うん、平気平気」
正直あんまり平気ではなかったが、台所の明かりが点いたのを見て、ママに見つかる前に慌てて部屋へと引き上げた。
その姿があまりにも情けなくて可笑しかったのか、以後俺を見るたび、クリスが楽しそうに笑うようになった。
【Mission complete?】