第8章 【頼りになる友達】
石造りの玄関ホールを通り、大広間の前を横切った時、スラグホーン先生とすれ違った。スラグホーン先生は4人を――正確にはハリー、クリス、ハーマイオニーの3人を見て大きく方向転換した。
「やあやあやあ!お三方!こんな所で会えるとは!!」
「こ、こんばんは、スラグホーン先生」
「これから夕食かい?良かったら私の部屋でどうかね?他にも生徒を招いているんだ、きっと楽しいディナーになる。特にハリー、君には是非来て欲しい」
「すみません、僕スネイプ先生の罰則があるので」
いつの間にそんな逃げ道を用意していたのか、ハリーはさらりと言って退けると、本当にどこかへ行ってしまった。
どう逃げようかコンマ1秒間で悪知恵をフル稼働したクリスは、咄嗟に手にしていた本を利用することを思いついた。
「申し訳ありません先生。私、これを図書館に返さなくちゃいけないんです。じゃないと司書のマダム・ピンスに怒られてしまうので。ですから少し遅れてお伺いさせていただきます」
「むう、そうか、分かった。それじゃあ先にミス・グレンジャーと行って待っているよ」
ハーマイオニーの声にならない叫びを聞きながら、スラグホーン先生に連れて行かれるのを手を振って見送った。その横で、ロンが不機嫌そうな顔をしていた。
「君、行くの?」
「行くわけないだろ、面倒くさい」
何がディナーだ、と鼻で笑うと、ロンは安心したようにため息をついた。
「君は本当に頼りになる友達だよ」
「言っとくがこの貸しは高いぞ。ハグリッドの件も含めてだ」
「オーケー、オーケー。出世払いで良いかい?」
「出世するのか?」
「トレローニーがそう予言してたよ」
そう言いながら眉毛を大げさに釣り上げるロンに、クリスは笑いながらその背中を叩いた。