第20章 【束の間の別れ】
とにかくその場を収めると、クリスは「もういいだろう」と決めつけ、談話室を出て行った。
次の日はクィディッチの最終試合なので、生徒の殆どがグラウンドに集まっているので、好きなだけ談話室が使えるという事だ。それを利用しない手はない。
クリスが図書館で古くてかび臭い呪文書などを引っ張ってメモにまとめていると、どこからともなくハーマイオニーの声が聞こえてきた。
「あったわ……これよ、これ!」
「ハーマイオニー、何してるんだ?」
「あっ、クリス!ねえ、これを見て!!」
ハーマイオニーは、何やら古い紙切れを差し出した。そこには『アイリーン・プリンス。ホグワーツ・ゴブストーン・チームキャプテン』と書かれていた。
その下の色のはげた写真には、お世辞にも美人とは言い難い鷲鼻の女の子が写っていて、クリスはわずかに首を傾げた。
「……これがどうした?」
「よく見て!プリンスよ、プリンス!!ハリーはプリンスは絶対に男だって言ってたけど、この子が例の教科書の持ち主だって可能性は十分考えられるわ!」
「ハーマイオニー……」
飽きもせずよく喧嘩の種を見つけるなあ、と、クリスは呆れ半分頭が痛くなってきた。こんな事をしても、ハリーが納得するはずがないのに。
それともやはりあれか、本当はハーマイオニーとしては『魔法薬学』で自分より良い成績を取られて腹が立っているのか。だからプリンスの正体を暴こうと躍起になっているのだろうか。
散々迷ったクリスだったが、ここで発言すれば間違いなく巻き込まれると思い、ぐっと言葉を飲み込むと手を振りつつ即座にその場から退却した。