第18章 【ダンブルドアの過去】
「ハリー、遅いな……」
談話室の時計を見ながら、クリスがぽつりと呟いた。
時刻は午後9時過ぎ。ハリーが城を出てからもう3時間以上たつ。ハグリッドが指定した黄昏時はとっくに過ぎ、もう夜の帳が下りはじめ空には幾つか星が瞬いていた。
いくら『幸運の液体』と名高いフェリックス・フェリシスを飲んだと言えど、こうも帰りが遅いと心配になってしまう。クリスは眉間にしわを寄せ、大きくため息を吐くと途中まで書いていた『魔法史』のレポートを放り出した。
「駄目だ、とてもじゃないが集中できない」
ハリーの事が心配なのは、何もフェリックス・フェリシスの効果を疑っているからではない。逆に信じているからこそ心配なのだ。
談話室を出ていく時、ハリーは薬をほんの一口しか飲まなかった。つまり効果は精々2、3時間が限度であり、計算するともうとっくに薬の効果は切れているはずだ。
それなのにハリーがまだ戻っていないという事は、何らかのトラブルに巻き込まれている可能性が高い。
まさかホグワーツで『死喰い人』に襲われている可能性は低いだろうが、ハリーの敵は校内外問わず大勢いる。
「フィルチか、スネイプにでも捕まって無ければ良いけど……」
「そんなに心配なら、忍びの地図で確認したら?」
「そうだな、その手があった」
流石はハーマイオニー、単純かつ明快な解決法だ。
早速ハリーから預かっている忍びの地図を広げると、同じように宿題をやっていたロンが、それにつられる様にクリスの横に移動してきた。同様にハーマイオニーも気になるのか、レポートを書きながら横目でチラチラ覗いている。
幸いこの時間は殆どの生徒が各寮に戻っているおかげで、ハリーの名前を探すのにそれほど手間はいらなかった。
「いたぞ、校長室だ」
「ってことは、スラグホーンの記憶を手に入れたのかな?」
取りあえずトラブルに巻き込まれていなかった事が確認できて、クリスはホッと胸をなでおろした。