第13章 【クソったれクリスマス】
「実はアンブリッジ女史から、君が将来召喚術の研究を目指していると聞いてね。老婆心ながら、僕の方で色々な機関に問い合わせてみたんだ」
「……それで?」
「そうしたら、パラケルスス研究所が是非君を迎えたいと言ったんだ。もちろん、僕の推薦状を読んでだが」
「……それで?何が望みだ?」
アンブリッジの名前が出た瞬間から、クリスは先が読めていた。どうせ魔法省の為に何かしろとか言うんだろう。老婆心とか言いながら、推薦状をちらつかせてくる辺りが頭にくる。
「はっきり言おう、パーシー。私は魔法省の為に何かする気は全く無い。分かったらさっさと帰ってくれ」
「……君は分かってない。君の存在は今や個人のものに止まらない。世界全体の問題なんだ」
「世界だろうがなんだろうがクソ食らえだ、私は私のやりたい様にやる」
「君は世界の平和を望んでいないのかい?」
「私が望んでいるのはヴォルデモートを殺す事だけだ。安っぽい平和だなんて反吐が出る」
シーンとリビングが静まり返った。気がつくと、ウィーズリーおばさんの手が止まっていた。
居候として、これ以上の口論は不味い。一応パーシーはウィーズリー家の家族なのだ。その家族の前で、いらぬ争いを起こすわけにはいかない。
「すみません、ちょっと頭を冷やしてきます」
クリスが外に出ようと席を立った時、扉が開いて、ハリーがリビングに入ってきた。その後から、白髪交じりの偉丈夫が続く。
その偉丈夫を見たとたん、パーシーが針金でも入っているかのようにピンッと背筋を伸ばした。
「大臣!首尾は!?」
「首尾?何のことかなパーシー、私はただこの少年と庭を散歩していただけだ。それより君の方こそ、ご家族と歓談出来たかね?」
「ええ……まあ……」
パーシーは言葉を濁したが、そんな事をしなくともこの場の空気を読めば計画は失敗に終わった事は明らかだっただろう。
クリスがハリーを見ると、ハリーもクリスを見ていた。その視線から、お互い同じ目に遭っていた事がわかった。そして、お互いの返答も。
パーシーと大臣が帰ると、ウィーズリーおばさんはその場でエプロンに顔を埋めて泣いた。その声を聞きながら、ロンが苦々しげに呟いた。
「なんてクリスマスだよっ、クソッ!」
その言葉に、クリスは心の中で激しく同意を示した。