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SketchBook【R18】

第2章 Sketch1 --莉奈



「今晩は、莉奈」

「レニー(仮)! 遅いよ、眠い中待ってたのに!」


彼女のマンションの窓を叩くと、彼女は真夜中にも関わらず大声で愚痴りながら私を招き入れます。

ちなみにレニーというのは仮名で、その役をしているドラマの俳優が、私に似てるからという理由で彼女が勝手につけました。
私はその俳優をしりませんが、どちらにしろ私の本当の名前は、人間には発音出来ぬものなので構いません。


「貴女人を呼びつけておいて、いい加減に挨拶位覚えたらどうです?」

「こ・ん・ば・ん・は、レニー」


そんな、寝間着姿の寝癖までついた仏頂面で棒読みされましても。

いつもジャケットを欠かさず、礼節を重んじる私の世界では考えられません。

まだハタチそこそこの彼女は、それなりの身なりならば、きちんとした淑女にも見えるというのに。


「で? さっさと見せてください」

「………目、つぶってくれる?」


視覚が無くとも、香りがするので分かるんですけどね。

けれど私はいつも偉そうな彼女が目を逸らし、決まりが悪そうな表情をして、『お願い』してくる様を見るのは嫌いではないんです。


莉奈の肌はとても繊細で、金属や毒性のあるものに大変弱く、その刺激ですぐに痛み腫れてしまいます。

不純物という点では私も同じなんですが、何故か私とそれらは相反する作用を持つらしく。
どんな薬を使っても治らない莉奈のそれが、私には治療が可能なのです。



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