第8章 Sketch2 --楽園
「お兄ちゃん、何かあったの?」
窓の外の林の方をじっと眺めていたリュカが、背後から掛けられた声に振り向いた。
「ああ……体はもう平気?」
その言葉にミーシャが少し赤くなった。
「……うん。 初めてだったからちょっとびっくりしたけど、昨日近くの泉に水浴びに行ってきたし。 また誰か来た?」
「ミーシャが結界張ってくれてるお陰で問題ない。 昔っから、潜在能力では父さんや俺なんかよりお前が一番だったからな」
そんな風に褒められ、慣れないミーシャは益々顔を赤らめた。
「そんな事ないよ……お兄ちゃんが色々教えてくれたから」
「まあ、強過ぎる余りに視え過ぎるってのも、考えものだけど」
そう独り言みたいにリュカが呟いた。
「何か言った?」
「何も……おいで。 ミーシャ」
ここに住み始めてから木の葉の色が一度変わる位の、いくらかの時が過ぎた。
リュカは彼女に食事を用意し、ゆっくりと休養を取らせた。
初めはふさぎ込みがちだったミーシャは精神的にも間もなく落ち着いた。
彼女の頬はふっくら薔薇色を帯び、痩せた少女は急速に美しい娘へと変化していった。
とはいえ、彼女の変化はそれだけではない。