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SketchBook【R18】

第7章 Sketch2 --漆黒



だけど、そうしたら。


「お父さんはそういう人じゃない。お兄ちゃんも知ってるでしょう?」


まだ何かの間違いだったのならましな気がした。
ミーシャの何かにすがる様な目だった。

お酒を飲みすぎたのかもしれない。
酔ってお母さんと間違えたのかもしれない。



「────」


リュカは何も言わなかった。

ミーシャの頬に一筋の涙が伝う。


「……そうじゃないなら、それなら、最初から……あれは、お父さんが全部?」


あんな事を私にするために?


リュカがそれには答えずミーシャから目を逸らした。


「ここ、前にうちの使用人が使ってた家だ。 うちからは離れてるし、今は空き家みたいになってるけど……俺も正直家には戻りたくないし、しばらくここで暮らそう…おいおい、もう少し元気んなったら、話してくれればいいから」


ミーシャも家に戻る気は起らなかった。

信じられる人なんてもういない。
家族以外の、リュカ以外の男性が、男がたまらなく怖い。

これ以上失いたくない。


─────なくしたくない


そんなミーシャの心理が彼女からリュカへの猜疑心に蓋をした。


「……ありが…とう」


「大事な妹だからな。 気が向いたら食え」


リュカがぽん、とミーシャの頭の上に手のひらを乗せ、柔らかく微笑んだ。






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