第7章 Sketch2 --漆黒
一瞬、目の前が真っ暗になった。
『お…父さん……?』
視界と声が、用を成さなかった。
まるで冷水を浴びたみたいに体が引きちぎられて感覚が無くなる。
濁った色で荒い息を吐いていた。
こんな姿が私のお父さん?
ずんっと突き上げられて、顎を逸らした時にひゅっ、と喉が鳴りやっと空気を吸えた。
「────はっ、は…っ」
ミーシャは目を見開き浅い呼吸を繰り返した。
見上げる男は確かに先ほど話をしていた私の家族だ。
私の中にお父さん、が?
掴まれている腕を振りほどきたかった。
耳に入ってくる水音から耳を防ぎたかった。
それも叶わない。
「醒め……て」
こんな夢はもう止めて。
ミーシャがぶるぶると体を震わせ、血を吐くような叫び声を上げた。
「っやああ、あッあああああ────!!!」