第1章 Sketch1 ---Storigoi
「ちょっとォ! さっきまたアンタの仲間にやられたんだけど!!」
スマートフォンの着信を押すと、そんな不快でけたたましい声が、私の狭い寝床に反響します。
それを予想出来るにも関わらず、私はつい、いつも彼女に反応してしまうのです。
「……また、貴女ですか。 何度も言いますが、蚊ってのは私の仲間じゃありませんし、貴女がどうやられようが、こちらには関係の無い事です」
暗闇に光る画面の左上を見ると午前三時。
丑三つ時とはいうけれど、夜更かしは肌に悪いので私は早めに就寝するタイプです。
「いいから! 来て。 明日も会社でこっちは寝れないんだから!!」
「どちらにしろ寝れませんよ」
私の話も聞かずに、一方的にブツっと電話は切れてしまいました。
「やれやれ……とんだビッチですね」
私は思わず汚い呪いの言葉を呟いていました。
真夜中に突然人を呼び出すなんて、こんな我儘が許されるのは人でいう、父親か母親を呼ぶ幼子位のものじゃないでしょうか。